100年後のデフォルト?
水上都市といえば、思い浮かぶのが”水の都”ベネツィア。周辺部を含めて人口は約25万人。(福島市よりやや小さいくらい。)
中世にはヴェネツィア共和国の首都として栄えた都市で、「アドリア海の女王」という異名を持つ。まめしばの「イタリア紀行」でも取り上げられていましたね。
まめしば「イタリア紀行」より
ここは水面下に何本も基礎杭を打った上に造られた都市で、建物の水路をゴンドラなどで行き交う。
そのヴェネツィアも近年では、世界的な海面上昇の影響を受けて対策が必要になるなど、深刻な状況にあるようだ。
”海面上昇”といえば、ケビン・コスナーが主演した1995年のアメリカ映画『ウォーターワールド』が思い出される。
地球温暖化の海面上昇によって全ての陸地が水没した未来世界。地球上のどこかに残っているという伝説の陸地「ドライランド」を捜して旅をするSFアドベンチャー。
生き残った人類は人工的に建造した”環礁”(↓)で生活しており、海運による他の環礁との交易で命を繋いでいる。
将来のウォーターワールドに備えて・・という訳でも無かろうが、近年、アチコチで水上都市の建設が進められている。
有名なところではドバイのパーム・ジュメイラ。政府の肝入りで建設されたパーム・アイランド3島の一つで、椰子の木を模った形状の人工島。
このパーム・ジュメイラの建設によって、ドバイの海岸線が250Km伸びたというのだから、その巨大さが推し量れますね。
最近では上掲の写真のように、パーム・ジュメイラを眼下に見下ろしながらサポート付きのスカイダイビングを楽しむ豪快なアトラクションもある。
是非、一度やってみたいものだ。(命あるうちに:笑)
そして、オランダの建築事務所ウォータースタジオがモルディブの首都マレに建設を始めている水上シティがある。
パーム・ジュメイラは埋め立ての人工島だが、こちらは固定された浮体構造。もちろん温暖化による海面上昇に備えてのもの。
同社の技術は、浮体構造物と海底を繋ぐ柱を水の圧力を用いて上下させる構造で、ハリケーンが来ても波の上に浮かんでいられるスグレモノ。
既に出来上がったエリアには、カラフルな建物が立ち並んでいる。
水上シティ(モルディブ)
こちらは建物だけでなく、道路も含めた”街区”として作られており、ソコだけ見れば陸上建築と何ら差異は無い。
水上シティ(モルディブ)
同社は水上建築を専門に扱っている会社で、これまで居住できるヨットなどを手掛けて来た。
フローティング・ハウス
内部はご覧の通り。通常の住宅と遜色のないもので、雨水を用いた栽培システムや飲料水の循環システムなども備えている
内部の様子
上面には太陽光パネルもあるようだが、さすがに天候によって供給量が左右されてしまうのが欠点。
下の写真は、母国オランダでリリースされている定置タイプのもので、陸上の電力網に接続してこの問題を解決した。
もちろん気分によって移動させることも可能。行政上の手続きとかは面倒かもしれないが。
定置タイプ
このモルディブの水上シティでは、同社がかねてから提案している「水上劇場」などもきっと実装されるのだろう。
水上劇場(モデル)
一方、韓国の釜山で承認され、今年から着工するという「オーシャニクス・シティ」は更に大規模だ。
元々はデンマークの建築家ビャルケ・インゲルスが設計したもので、その実現を目指して仏領ポリネシアの観光大臣を勤めたマルク・コリンズがベンチャー企業オセアニックスを設立して実現を目指し「オセアニックス計画」と呼ばれていた。
ベースになるのは、約1万8千平方メートルの六角形の浮体式モジュールで、最高7階建て構造物一つに300人が居住できる。
このモジュールを幾つも繋ぎ合わせて、より巨大なコミュニティを形成する構想だ。
水上コミュニティ
コリンズは、温暖化の影響をあまり受けていない場所に実験都市を造り、そこでゼロ・エミッション(エネルギー自給自足・廃棄物を一切出さない閉じた循環システム)を検証する計画だったが候補地が見当たらず、足踏みしていた。
浮体下部
そこで受け入れを表明したのが新しいモノ好きの韓国(釜山)という訳だ。
当面の計画では1650人が居住できるコミュニティの形成を目指すが、理論的には「オーシャニクス・シティ」を1万人規模に拡大することも不可能ではないと言う。
生活想像図
ただ気になるのは、マルク・コリンズが「まずは実験都市で」と慎重なスタンスを取っていたのに対し、韓国は初めから本格居住を目指して前のめりになっている点だ。
そう言えば、2020年までに韓国型宇宙ロケットを開発して月面に韓国の旗を建てるという国家プロジェクトもあったはずだが、あれはどうなったのか?
他にも原子力潜水艦を建造するとか、ノーベル賞を取るとか、いろいろな野望があったはずだが、何一つ実現したという話を聞いたことが無い。
まあ、今回は国連もバックに付いたので大丈夫とは思うが、これがウォーターワールドの「環礁」モデルとなるのか、プロジェクトの吉報を生温かく見守らせていただきましょう(笑)
《配信:2022.11.23》
葉羽 一方、サウジアラビアでも独自の海上都市構想「オクサゴン(Oxagon)」を発表した。こちらは完全自動化港湾の物流拠点。
オクサゴン完成予想図 |