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 その112 太陽の沈まぬ国
「モーニングコーヒー」Benchi time

 世界征服を目指した国々。

 ロシアのウクライナ侵略はプーチンの思惑通りには進んでいないようだが、元々その行動の根源には、かつて大勢力を誇っていたソビエト連邦の版図を再び手中にしたいという野望があったと言われる。

  プーチン

 確かにソ連邦の崩壊前には、現在のロシアをはじめ15の国々が連邦の下に結束しており、その勢力は強大だった。

 地図に掲げるとおり、現在は別々の独立国となっている15の国、これらがソ連邦の名のもとに一つの国家として欧米をはじめとする「西側」と対峙していたのだ。

 だが、かつて「太陽の沈まぬ国」と呼ばれた世界国家があった。1580年、”無敵艦隊”を擁するスペイン王国ハプスブルク家のフェリペ二世が、王統の断絶したポルトガル王国の王位を兼ね、その領土を併合したのだ。

  フェリペ二世

 これによってイベリア半島全域に加え、ネーデルランドやイタリア南部、ポルトガルが勢力を伸ばしていたアフリカ沿岸部、さらにはインド、フィリピン、南米大陸、メキシコを中心とする中央アメリカまで手中に収め、以後、1640年頃まで最大版図を維持することになる。

 だがそのスペインもイギリス併合を狙ったアルマダ海戦で無敵艦隊が敗北し、以後、ヨーロッパから北米大陸にかけて争われた第二次百年戦争によって次第に衰退し、代わってイギリス連邦が「太陽の沈まぬ国」となる。

  アルマダ海戦の敗北

 1921年当時のイギリス連邦(大英帝国)の世界版図が以下に示す地図だ。

 中国や東南アジア諸国は染まっていないが、実際、海岸沿いの主要都市はほとんどイギリスをはじめとする列強の植民地となっていた。

 歴史を振り返れば、アジアも世界帝国を形成した時期があった。

 イスラム世界が拡大した時期もその一つだが、実際に征服した範囲から見れば、13世紀のモンゴル帝国にとどめを刺す。

  フビライ・ハン(世祖)

 最大版図は約2400万km²で、地球上の陸地の約17%を統治し、当時の人口は1億人を超えていた。

 その領土の範囲は、人類史上においてイギリス連邦(大英帝国)に次ぐ2番目の大きさとなる。

 お隣中国では習近平が権力集中に成功して、個人独裁への道をまっしぐらだが、彼は常々「中国の夢」をスローガンとして、経済力をバックにした影響力の増大を画策している。

 アメリカに対し、太平洋を真ん中で分割して西半分を統治する話を持ちかけたのは有名だが、それを一蹴されると(当たり前だ)、日本の尖閣諸島や南シナ海に軍事力を行使して、触手を伸ばしている。

  中国の南シナ海人工島の軍事基地

 もしや、モンゴル帝国の復活を狙っているのかと思ったが、さにあらず。彼(あるいは彼ら)の脳裏にあるのは中国の教科書にも掲載されている「国恥地図」らしい。

 「国恥」という言葉が最初に現れたのは、1915年、日本から中国に「対華二十一ヵ条要求」を突きつけられた時だが、蒋介石が中国の政権を掌握してからは大々的に「国恥キャンペーン」が実施され、”かつての中国”を可視化した国恥地図を作成して小中学校の地理教科書に掲載した。

 「国恥地図」には様々なバリエーションがあるが、その一つが以下。

 東側では、朝鮮半島はもちろんサハリンや南シナ海、日本に対しては尖閣ばかりか沖縄全域がかつての中国領とされている。

 もちろん荒唐無稽で、そんな歴史的事実は存在しないが、問題なのは「中国人はこの地図を見て育っている」ということだ。

 中国の領土的野心の根源はこの「国恥地図」にあり、そこに現代の政治力、経済力、そして軍事力をもって『中国の夢』を追い求めているのが現代中国の姿だ。

  習近平

 「中国の夢」が台湾進攻で終わると思ったら大間違い。日本の政治家は、もっと目を覚まさなくてはならないだろう。

 《配信:2022.11.9》

葉羽葉羽 この「国恥地図」の制作に協力したのは日本の会社だと言います。もしかして、いつも政府の揚げ足取りばかりしている”あの人たち”、その一味じゃないんでしょうね?(笑)

 

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