日本財団主導で、「多様性を受け入れる社会の実現」を目的に渋谷区内に国内外の16人のデザインの達人たちによる17の公衆トイレを設置するちょっと風変わりなプロジェクト「THE TOKYO TOILET PROJECT」(東京トイレプロジェクト)が昨年8月から進行中だ。
日本財団は、日本船舶振興会から2010年に名称変更したが、競艇の収益金で海洋船舶関連事業支援や公益・福祉事業や国際協力事業を行っている公益財団だ。
今回の「トイレ・プロジェクト」では、安藤忠雄、伊東豊雄、隈研吾などの大御所建築家のトイレに交じって、ファッション関係で注目されるのはNIGO(1970年12月23日生まれ)が原宿の明治通り沿いに作った公衆トイレである。5月31日からその供用は始まっている。
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NIGO(右) |
NIGOといえば、今やパリコレクションの常連になった「アンダーカバー」の高橋盾(じゅん)や今やコラボプロジェクトで引っ張りだこの藤原ヒロシと並ぶ「裏原」のカリスマである。
「裏原」とは、竹下通りや表参道などに代表されるファッションの街原宿ではなく、1994年に完成したキャットストリート周辺を中心にマニア向けのブランドが数多く立ちあがった場所のことである。
しかしその多くは消えてしまって、「裏原」という言葉も死語になりつつある。NIGOも、自身が生み出したブランドの中で最も有名な「A BATHING APE」は香港の有名なセレクトショップITに売却してしまった。
しかし現在でも「HUMAN MADE」ブランドのデザイン、ユニクロのTシャツブランド「UT」のクリエイティブ・ディレクター、ヒップホップグループ「TERIYAKI BOYZ」のプロデューサー、カレーショップ「CURRY UP」(北参道、新宿ルミネ、中目黒)の経営など健在だ。「CURRY UP」はなんとファレル・ウイリアムスの命名だ。
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NIGOの公衆トイレ(提供:日本財団) |
さてNIGOの公衆トイレだが、「温故知新」がコンセプトで古き良き一軒家をイメージ。入り口や窓のぺパーミントのアクセントがさわやかでトイレには見えない。NIGOらしいちょっとオモチャのようなデザインである。
左が男子、右が女子、中央がバリアフリーになっているが、男子、女子のアイコンが分かりづらく、間違って入りそうなのがちょっと問題か。
NIGOは、藤原ヒロシ(1964年2月7日生まれ)に似ていることから、2号と名付けられた。
1号である藤原ヒロシはDJ、ミュージシャン、音楽プロデューサー、ファッションデザイナーの肩書を持ち、特に団塊ジュニア世代からは、絶大な支持を集めている。
そして藤原ヒロシは現在コラボビジネスにひっぱりだこである。本人のブランドである「Fragment Design」よりも、コラボの方が本業になっている。
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藤原ヒロシ |
「ルイ・ヴィトン」「ブルガリ」「タグ・ホイヤー」「バカラ」「モンクレール」などのラグジュアリーブランドはもちろんのこと「サカイ(SCAI)」「アンダーカバー」のデザイナーブランド、「ナイキ」「リーバイス」「ニューバランス」「スチューシー」「バートン」「スターバックス」「ポラロイド」などの世界的ブランドともコラボ。
そうかと思えば、昨年は私立青稜中学校・青田高校の制服(男女)をデザインしたりしている。なぜ、こんなにモテモテなのか。
そのコラボ商品の発売初日にそのブランドの店に行ってほしい。長蛇の列を必ず目撃する。もはや「裏原」のカリスマではなく、「コラボの帝王」と言ってもいいほどだ。
とにかく青春時代にファッション誌などでNIGOや藤原ヒロシの洗礼を受けた団塊ジュニア(1970年~1974年生まれ)たちにから絶大な支持を集めているのである。
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藤原ヒロシとマセラティ(提供:マセラティジャパン) |
その藤原ヒロシが今回初めて車とコラボする。コラボするのは高級車の最高峰である「マセラティ」である。
「Fragment Design × Maserati」はマセラッティ初のハイブリッドモデル「ギブリ ハイブリッド」をベースにストリートカルチャーをけん引してきた藤原ヒロシの感性を落とし込んだ出来上がりになっている。
「コラボの帝王」の頂点と言ってもいいかもしれない。
(2021.8.6「岸波通信」配信 by
三浦彰 &葉羽)
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