TV(ザ ・シネマ)録画していた映画「昼顔」(1967年 ルイス・ブニュエル監督 1時間40分)を見る。
ブニュエル映画はかなり見ているが、この「昼顔」は見ていなかった。
「昼顔」とググるとTVドラマ「昼顔〜平日午後3時からの恋人たち〜」(2014年に22時から放映されたフジテレビの全11話の上戸彩主演のTVドラマ)の方がドドッと出てくるのだが(笑)、このブニュエル監督の映画はその元ネタである。
どちらも原作はジョゼフ・ケッセルの小説だ。スマホのCMがお似合いの上戸彩とカトリーヌ・ドヌーヴじゃ格が違うよと今更言っても始まらない(笑)。
さて映画の見所は、カトリーヌ・ドヌーヴ(1943〜)の芳紀24歳の匂うが如き美貌である。これを味わうに尽きる映画だ。
シュールレアリズムの映画監督と言われるブニュエルが現実世界と空想世界をない混ぜにした得意の作りで、カトリーヌ・ドヌーヴの美貌に潜む退廃の味わいを徹底的に描き尽くすのである。
一種変態的でサディスティックな映画でもあるのだが世界的な映画監督として声望が高まりつつあったブニュエルの映画に出演して女優としてのキャリアを確立しようというドヌーヴの野心もあったのかもしれない。
なおブニュエルは「哀しみのトリスターナ」(1970年)でも再びドヌーヴ主演の映画を撮っている。
左から夫役のジャン・ソレル、ドヌーヴの演技指導をするルイス・ブニュエル監督、ドヌーヴ ただしドヌーヴの存在が突出し過ぎて、ただの変態映画に過ぎないという評価があってもおかしくはない(笑)。
実は、この映画には、もうひとつのポイントがある。それは、ドヌーヴの映画中のファッションである。
ほとんどがイヴ・サンローランによるプレタポルテだと思われるが、ドヌーヴが「イヴ・サンローラン」ブランドの信奉者の一人に数えられるようになるきっかけの映画ではないのかしら。
とにかくパリモード界を我が手に収めつつあったイヴ・サンローランのファッションが「同時代的」に映像で楽しめるのである。
ドヌーヴが着ているのは、「イヴ・サンローラン」のミリタリー調のコートドレスだろう。
アトリエでのサンローランとドヌーヴのツーショット。
やたらに映画中でフェティッシュに強調される靴だが、上掲は「ロジェヴィヴィエ」。映画公開後に飛ぶように売れたという伝説がある。
とにかく「ザ・シネマ」チャンネル(無料)は時々とんでもない過去の名画が放映されるので、チェックが欠かせない。
(2020.9.4「岸波通信」配信 by
三浦彰 &葉羽)
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