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東京の表参道・原宿界隈でちょっと話題になっている店舗が2つ9月、10月に出現した。9月27日、原宿の明治通りにオープンしたのはオシャレ雑貨の「ASOKO(アソコ)」。約100坪(330㎡)の店は、オープン以来行列が途切れることはない。

 文房具やキッチン雑貨、インテリア雑貨、DIYグッズ、ホビー用品など幅広い商材を中心価格100円~500円で販売している。

ASOKO

ASOKO

 この「ASOKO」を運営しているのは大阪を本拠にするファッション企業(アパレル卸しや専門店を営業する)の遊心クリエーションだ。

 この原宿店は大阪の南堀江店に次ぐ2号店だ。315円の壁掛用の動物フックや105円のハンバーガーの形をしたメモ用紙などが売れているという。

 話題のもう1軒は10月2日に表参道をちょっと入った場所にある「フライング タイガー コペンハーゲン」だ。

 もとはファミリーレストランの「ロイヤルホスト」があった場所だ。売り場面積は400㎡のこの店も大阪アメリカ村に第1号店をオープンしており、表参道店は第2号店になる。

F.T.C

F.T.C

 同店を運営しているのはゼブラジャパン。同社は今年7月に日本のサザビーリーグとデンマークのタイガー社による50%:50%の対等出資によって設立されている。

 ゼブラジャパンの山本浩丈CEOは、サザビーリーグのスターバックスコーヒー ジャパンなどでキャリアを重ねてきた人物で「フライング タイガー コペンハーゲン」(以下FTC)では「ファッションライフスタイル雑貨ストア」という新しい小売スタイルの確立を目指している。

 同店も前出の「ASOKO」同様にオープン後2ヶ月が経過したが行列がまだ見られており盛況が続いている。105円のオシャレナプキン、420円のインディアンの女の子がプリントされたナイロン傘、315円のマトリョーシカ柄のバッグなどが人気だ。

 日本人は、新しいもの好きで、流行に敏感な民族だ。しかも、こうした流行において行かれるのに恐怖感すら抱く。主体性がなく群れたがるという国民性である。「行列」はそうした日本人の特性を端的に表した現象である。

F.T.C店内で列を成す人々

F.T.C店内で列を成す人々

 美味しいラーメン店の行列は有名だが、最近ではポップコーンやパンケーキが新しい行列アイテムに加わっている。例外はあるものの、この行列は短期間しか続かないのが一般的である。熱しやすく冷めやすいのも日本人の国民性のひとつだからである。

 しかし、「ASOKO」と「FTC」は、その行列がいつまで続くかどうかは別にして、どうも日本のファッション市場における新しいマーケットを創出しているように思える。それは、「オシャレ生活雑貨」という新しいジャンルの出現である。

 日本における生活雑貨市場を考える上で忘れてならないのは、1976年に生まれた東急ハンズである。

 DIY(DO IT YOURSELF)という日曜大工ブームに乗って東急ハンズは生まれたが、プロユース思考が根底にあった類似業態のロフト(旧セゾングループによって始められたが現在はセブン&アイ・ホールディングス傘下のそごう・西武の会社になっている)や無印良品などがこれに続いた。

東急ハンズ

東急ハンズ

 特にバブル経済が崩壊した後の若年層のシンプル思考と結びついた無印良品は日本人のライフスタイルにフィロソフィーを提案する存在として大きな潮流になって現在に至っている。海外でも「MUJI」として低所得者だけではなくいわゆる知識人にも人気がある。

 こうした第1次生活雑貨ブームに続くのが、バルスによって始められた生活を彩り楽しくする「オシャレ生活雑貨店」という流れだ。

 これは同社が展開する「フランフラン」に代表される第2次生活雑貨ブームと呼ぶことができる。当然のことながらその出店は都心が中心になっている。

 コンビニ的な展開の「イッツデモ」(アパレルメーカーのワールドが運営)なども登場した。こうした流れと同時に日本では、バブル経済崩壊後に「100円ショップ」という生活雑貨ショップが誕生している。

イッツデモ

イッツデモ

 「ザ・ダイソー」や「キャンドゥ」と呼ばれる店舗がその代表例で100円や200円に価格が設定された商品が置かれている。基本的に価格が最優先事項であり、デフレ経済が続き、収入が増えない日本経済の中で一時急成長を遂げた。

 日本の生活雑貨市場を概観して来たが、この9月10月に東京に第1号店を構えた「ASOKO」「FTC」はこうした流れの中で生まれて来た業態だ。つまり「フランフラン」に代表される「オシャレ生活雑貨」が「ダイソー」や「キャンドゥ」の低価格生活雑貨と合体して生まれた業態とも言える。

 デフレ経済の中でも、人々は生活に潤いを与える様々なアクセント・ファッションを求める。

 日本では1990年バブル経済の崩壊以降、ウェア(アパレル)に代わって、ファッション市場の主役になったのは「ルイ・ヴィトン」や「グッチ」に代表されるようなインポートのラグジュアリー・ブランドのハンドバッグだった。

 それは20万~30万円の価格だったが、最近は小売価格がその半分である10万~15万円前後の「クリスチャン ルブタン」「ジミー チュウ」などのインポートシューズにその主役を明け渡しつつあるように思われる。

クリスチャン・ルブタン

クリスチャン・ルブタン

 いずれにせよインポートバッグやインポートシューズが若いキャリアウーマンに自家需要されて、その市場は大きく拡大して来た。

 しかし、その価格帯が今回の「低価格オシャレ雑貨」店の行列を見ると、下の価格帯に大きく振られてしまっているのではないかという印象すらうける。

 果たして、行列が続く「低価格オシャレ生活雑貨店」の人気がいつまで続き、それがどんな影響を生み出してくるのか、注目したい。

                

(2013.12.17「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

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