今週あたりから新年が本格的に始動した観があるが、年末から新年にかけて、読んだ本から、印象に残ったものを取り上げてみた。
まず「絶望の国の幸福な若者たち」(古市憲寿著、講談社刊)。(右写真⇒)
著者は26歳の東大大学院生。(↓)
簡単に要約すると、日本の置かれている現状は救いようがないほど厳しいものがあるが、そこに生きる若者たちは、その大半が自分たちは結構幸せな暮らしをしていると感じており、色々問題はあるが、フリーターで嫌な仕事をしていても、気の合う仲間たちと休みの日に川原でバーベキューでもやれたらそれで幸せだという若者が増えているんだそうだ。
「これだから今の若いもんは・・・」という老人やオヤジたちの声が聞こえてきそうだが、古市氏によれば、そんな声はいつの時代にもあった「若者論」に過ぎないという。
私もいまさら「坂の上の雲」を目指して大志を抱き世界に飛躍する日本の若者に期待するほど老いてはいないつもりだが、この著作に横溢する一種の茫洋とした楽観主義(学術色の感じられないエッセイ風のかるーい文体も含め)には素直には同調できないものがある。
最近東北楽天ゴールデンイーグルズの岩隈久志・投手のマリナーズへの移籍が決まったが
その年棒が、3億円から1億1250万円に60%もダウンしたことをうけて、日本のスポーツ新聞は「わずか」とか「たった」と形容詞をつけて、怒りにも似た驚きを第一面で表明していた。
が、冷静に見て岩隈の実力はそんなものだろうし、それ以上に大リーグの選手評価も米国経済の冷え込みを反映して、シビアなものになっているのではないだろうか。
3億円の高給を棒に振ってまで大リーグに挑戦する「坂の上の雲」志向の岩隈の意気は買いたいが、スポーツ新聞の論調を始め、日本はまだまだバブっているなあと思う。
川原でバーべキューに興じられるうちはいいが、いずれ公園で段ボールのベッドで寝るようになる幸福な若者たちの姿が浮かんでくるのである。
それでも幸せならもはや言葉はない。
くれぐれも本作の続編「絶望の国の絶望する若者たち」が書かれないことを祈るばかりである。
(この項次回に続く)⇒
(2012.1.17「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)
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