「windblue」 by MIDIBOX


今回も2019年の総集編。

 もう「第九」公演しかなさそうだから、コンサート&オペラのベスト10を選んでみた。2019年は全部でちょうど50公演に通った。

 オペラが11公演(うちゲネプロ2回)、オペラ映画(メトロポリタン・オペラ・ライブビューイング)が3回、ピアノ演奏会1回、あとはオーケストラ公演で35回。

 自分でもオーケストラ演奏会が本当に好きな奴だと思うが、いい演奏会をいい席で聞く楽しみは本当に何にも代えがたい。しかし曲、演奏家、ホール&席が揃ったいい公演というのはなかなかない。

1.アラン・ギルバート指揮 東京都交響楽団 (12/16)
 マーラー交響曲第6番「悲劇的」

 これはダントツ。東京のオーケストラは本当にレベルアップした。

 この第6番、マーラーの交響曲では一番好きだ。

 

 アラン・ギルバート(52歳)は都響の首席客演指揮者に就任したばかりだが凄い人気だ。本当にスケールの大きな音楽をやる男だ。

 首席指揮者の大野和士の存在がかすむぐらいだ。

2.マレク・ヤノフスキ指揮ケルン放送交響楽団(11/25)
 シューベルト交響曲第7番「ザ・グレート」

 これはかつてのヘルマン・シェルヘン(録音しか知らないが)を思わせるような80歳のヤノフスキの指揮による爆演だった。

 ケルン放送交響楽団の技術は日本のトップクラスよりは落ちるがそれでも、興に乗ると凄いパワーを示す。

 

 なお演奏会前半のベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番第2楽章でホルンが出番を忘れて、演奏ストップ寸前の大事故になった。

 こんなのプロのオケでは初めてでビックリした。

3.クシシュトフ・ウルバンスキ指揮 東京交響楽団 (3/25)
 ショスタコーヴィッチ交響曲第4番

 まだ37歳のポーランドの新鋭指揮者ウルバンスキの快演。

 この指揮者はかなりの大物になって、ビッグポストに就くだろう。

 

4.パブロ・エラス・カサド指揮 NHK交響楽団(12/12)
 チャイコフスキー交響曲第1番「冬の日の幻想」

 指揮者のカサドは42歳。動かないことで有名なN響を操り、ロシアっぽくないチャイコフスキーが楽しめた。

 この指揮者もビッグポストを狙えるスペインの逸材だ。

 

5.沼尻竜典指揮NHK交響楽団 (10/30)
 ブラームス交響曲第1番

 NTT東日本主催の(抽選で当たった)利用者向け名曲コンサートという平日午後のどうでもいいような公演だが、なぜかお行儀の良いN響が炎のような凄演でビックリした演奏会。一体何があったのだろう?

 55歳の沼尻竜典はこんな熱血指揮をするような指揮者にはおもえないのだが。

(※右の背景画像)⇒

 ミンシシュ指揮パリ管弦楽団の有名なこの曲の1968年録音の名盤を思い出してしまった。こういうことがあるからコンサートはやめられない。

6.鈴木雅明指揮紀尾井シンフォニエッタ(6/21)
 バルトーク「弦楽器・打楽器・チェレスタのための音楽」

 古楽器演奏の世界的指揮者・鍵盤奏者の鈴木雅明(65歳)とその息子の鈴木優人(38歳)はともに古楽器演奏に加えて、最近は普通のオーケストラにも客演するようになっているが、これがなかなかいい。

 

 いわゆる現代音楽であるバルトークの「弦・チェレ」は難曲だが、緊張感に溢れる素晴らしい演奏だった。

7.クルレンツィス指揮ムジカエテルナ(2/13)
 チャイコフスキー幻想序曲「ロミオとジュリエット」

 今年の東京のオーケストラ演奏会で最も話題になったのはこの公演。

 寒風吹きすさぶサントリーホールの前で「チケット求む!!」とプラカードを持っていたら、チケットの余った男性が定価で譲ってくれた。

 なかなか鍛え抜かれたオーケストラで指揮者の情熱的な指揮によく付いていたが曲目が今一つ。

 アンコールでコンマスがチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を全曲演奏してしまったのには観客が唖然。

 

 指揮者のテオドール・クルレンツィスはギリシャ生まれでロシアに学んだ47歳。

8.新国立劇場 ドニゼッティ歌劇「ドン・パスクワーレ」(11/7)

 大野和士がオペラ部門の芸術監督になって以来、新国立劇場は実に面白くなってきた。

 この劇場では、ベルカントオペラの上演が少なくこのドニゼッティのオペラ「ドン・パスクワーレ」もこの劇場の初演であったが、アルメニア生まれの売り出し中の美人ソプラノのハスミック・トロシャン(ノリーナ役、写真下)が見事な舞台!!

 

9.新国立劇場 ヴェルディ歌劇「椿姫」(11/28)

 ソプラノの一人舞台なら、新国立劇場「椿姫」のギリシャ人ソプラノのミルト・パパタナシュ(ヴィオレッタ役)も魅せた。

 

 歌唱はまずまずだが美人のナリキリ演技というのに観客は我を忘れて引き込まれたのだった。

10.マリブラン歌劇場 モーツァルト歌劇「シピオーネの夢」(2/8)

 2月に仕事でヴェニスに行った。あいにく有名なフェニーチェ劇場での公演はなく、そのサブ劇場であるマリブラン劇場でモーツァルトの少年時代のオペラ「シピオーネの夢」を上演中でこれを鑑賞。

ヴェニスのリアルト橋

 オッフェンバッハの歌劇「ホフマン物語」に登場するリアルト橋で船を降りて薄暗い路地を入っていくと「ALWAYS三丁目の夕日」の古びた映画館のような建物が現れる。これがマリブラン劇場だった。

  マリブラン劇場の入口

 チケット購入ではカードが使えず、トイレの鍵は壊れていた。見たモーツァルトのオペラよりも、このなんとも古めかしい900席の劇場のことが忘れられない。

「ホフマン物語」では、この辺の娼婦ジュリエッタが有名な「ホフマンの舟歌」を歌うのだが、確かにいまだに猥雑な空気が淀んでいる。もう一度行きたい場所だ。

 
 モーツァルトの歌劇「シピオーネの夢」のカーテンコール

                

(2020.1.3「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

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