日本の大手上場アパレル企業としてワールドと並ぶトップ企業であるオンワードホールディングスが600店の閉店をすると10月3日付の日本経済新聞が報じた。
同社が国内外で展開する約3000店の20パーセントに当たる店数でショッキングなスクープだった。
オンワードホールディングスのメインの販売チャネルは百貨店でその年商の60%を占める。やはり、百貨店でのアパレル販売は厳しいのである。
大手企業は、中小の同業他社のシェアを食うことで十分生き残れると考えていたが、百貨店のアパレルマーケット自体の縮小が急ピッチで進んでいて、目算が大きく狂ったのが今回の600店閉店の遠因だ。
加えてその低迷の原因のひとつとして、百貨店ではなく、ショッピングセンターを主要なマーケットにしていた低価格のZARA、H&M、フォーエヴァー21などのいわゆるファストファッションやユニクロ、無印良品などの低価格ベーシックアパレルのここ20年ばかりの拡大が挙げられていた。
この20年ばかり、消費者の所得が全く増えていないことが、こうした低価格アパレル商品の拡大につながったとされている。
しかし、その一角であるフォーエバー21が、10月一杯で全国の14店舗及びECサイトを閉鎖し日本から完全撤退した。こうしたファストファッションですら、売れなくなり始めているのが、明らかになった。
消費者がアパレルを購入する手段として、Eコマースはもちろんメルカリに代表される二次流通市場が台頭しており、これが今回の撤退の原因のひとつだと言われている。
そうだとしても、アパレルが売れなくなっているのは明らかなようだ。またこれは、日本だけの現象でもない。
では、何が売れているのか?それは化粧品である。
昨年の今頃にもこの連載で、阪急うめだ店、そごう横浜店、横浜高島屋の化粧品売り場の拡大や新機軸(阪急うめだ店のヘアサロンやネイルサロンの導入)を紹介したが、さらにその動きは加速している。
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たとえば、今年4月に1階の女性向け雑貨売り場を2階に上げて、化粧品売り場を拡大し4ブランドを新たに導入した福岡の岩田屋や2020年の春の開業20周年に向けて、今まで3階のみだった化粧品売り場を1,4、6階にも展開し、売り場面積を約2倍にしたJR名古屋高島屋などが代表的な動きだ。
そして、阪急うめだと並んで、化粧品売り上げでは、世界一を争っている伊勢丹新宿店が9月25日、新設した2階化粧品売り場をオープンした。新設の2階と既存の1階を合わせ、面積は1.5倍に拡大した。
(※右の背景画像:伊勢丹新宿店のSENSAI売り場)⇒
1階は11月20日に改装オープンされたが、メイクアップとフレイグランスの売り場になる。各ブランドでテスタースペースを拡大しメイクアップアーティストによる最旬のアドバイスが受けられる。
今回オープンした2階は、国産と外資系の2ゾーンに分かれたスキンケアと美容機器の約30ブランドを揃える。
スキンケアでは、日本初のグローバルブランド「SENSAI」(花王グループのカネボウ化粧品傘下)、EC発ブランド(ECでしか売っていないブランドという意味です)の唯一の直営店になる「ディセンシア」(ポーラ・オルビスグループ)、美容機器ではヘアドライヤーなどの「バイオプログラミング」(リュミエリーナ)、「ダイソン」を新規導入した。
特に「センサイ」(日本語の「繊細」をネーミング)は、ヨーロッパ、中東など43か国、約3700店舗で販売されているラグジュアリーブランド・スキンケアで、日本の化粧品のクオリティの高さの証明になっている。
この9月の、阪急うめだ店と伊勢丹新宿店での日本初出店は「凱旋帰国」になる。
同店の2018年度(2018年4月1日~2019年3月31日)の化粧品売り上げは、2012年度の2倍に拡大しており、既存売り場が手狭になっていた。
商品カテゴリーバランスの是正が喫緊の課題だった。「ファッションの伊勢丹」の異名をとる伊勢丹でも、ラグジュアリーブランドを除けば、日本企業による中価格帯のアパレル商品にとってはなかなか厳しい商況が続いているのだ。
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日本の百貨店の化粧品売り上げは、今年1月から中国で施行された電子商取引に関する新法律により、日本での中国人の「爆買い」が年初減少したが、その後回復している。
インバウンド需要に加えて、化粧品消費を支えているのはいわゆるミレニアム世代と言われる日本人の20歳代の消費者で、まだまだ期待できそうだ。
(2019.11.22「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
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