前編、後編で紹介した2月のヴェニス出張だが、紹介しきれなかったので、「補遺」として書いてみる。
まず、今回上演がなかったので中に入らなかったフェニーチェ歌劇場だが、行ってはみた。意外に地味な外観だ。
思い出したが、やはりルキノ・ヴィスコンティ監督の映画「夏の嵐」の冒頭のシーンは、この歌劇場が舞台。ヴェルディのオペラ「イル・トロヴァトーレ(吟遊詩人)」の上演中に、騒ぎが起こるのが発端。
ヴィスコンティはミラノ近郊の生まれだが、よほどヴェニスが好きだったようだ。
「夏の嵐」と「ベニスに死す」の名作2本を残した。
サンマルコ広場の周辺には、ヴェニスで69歳の生涯を閉じたワーグナーが良く通った「カフェ ラ ヴェンナ」など有名なカフェがあるが、今回入ったのは1720年創業の「カフェ フローリアン」。
こちらはゲーテやプルーストがよく訪れたという。
プルーストはここでエスプレッソをすすりながら「失われた時を求めて」の原稿を書いていたのだろうか。
そういう魔力がヴェニスにはある、確かに。
正装したボーイがちっとも滑稽じゃない。
コーヒーは12ユーロ(1500円)もするんだから。
前にもちょっと紹介したMJQ(モダンジャズカルテット)の「たそがれのヴェニス」のジャケットの写真。
イギリスの画家ターナーによるカナル・グランデ(大運河)の名画。
しかし、このジャケットの写真は、「逆版」(ぎゃくはん。写真のネガを裏で製版)として有名らしい。
ロジェ・バディム監督のサスペンス映画「大運河」の映画音楽として作曲されたが、なかなか聴かせるイージーリスニング調のジャズだが、ジャケット写真に、ドンデン返しがあった!?
いいことずくめ今回の出張だったようだが、我が人生で一番まずいボンゴーレを食したのも今回。
最初の夜にホテル(4つ星のパレス ボンヴェキアーティ)のレストランで、海の都のボンゴーレはどんなものかと注文したのだが、全く汁気がなく貧相なアサリがのぞくヌチャヌチャのボンゴーレでオマケにプチトマトが噛めないほど硬い。
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ボンゴーレを食べて40年にならんかという我が人生で最悪のボンゴーレだった。
もう一品のタリアータもひどい出来栄えで一体厨房では何があったのか。
ヴェニス本島は端から端まで歩いてもせいぜい1時間ぐらいだと思う。
マリブラン歌劇場でオペラを観てからホテルまで歩いたのだが、道に迷ってしまった。その時に迷い込んだ広場。
かなり広いのだが、人っ子ひとりいない。なんか亡霊が出てくるのではないかと、いい歳をして恐怖を感じた。
ヨーロッパの街は路地に入れば迷路みたいなものではあるが、この時は実に心細かった。
往きも帰りもイスタンブールのアタルチュク空港を経由したが、この空港がバカデカイ。冗談だろうが搭乗ゲートが700台まであった。
写真は夜中の1時だというのに、混雑して新宿駅状態。
ここがヨーロッパとアジアをつなぐ空港、あるいはキリスト教世界とイスラム世界の境界だというのを改めて感じた。
あと100年すればこのあたりが世界の中心になっているのだろう。
それはいいとして、さすがに歳だ。エコノミー席で12時間飛ぶのはキツイ。さりとて30万円出してビジネスクラスにアップグレードするのもなあ。
帰ってからの時差ボケもなかなか戻らない。困ったもんだ。
なお、機中映画鑑賞は 「ザ・コンサルタント」(2016年。まずまず)、「羊と鋼の森」(2018年。なかなか)、「家に帰ると嫁が必ず死んだふりをしています。」(2018年。なんだこりゃ!?)の3本だった。
(2019.3.24「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
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