映画館には一度も足を運ばなかった。
TV放映の映画を約120本(そのほとんどは録画)観た。月10本、週2本というペースは、まだサラリーマンをやっている身からすると尋常ではない。
このコラムでも、ベストTV映画は、5月、7月、10月に書いていて、本稿はなんと2018年4回目のベスト10。
しかし、この歳になって映画の面白さがやっと分かってきたということか。淀川長治じゃないが、「映画って本当に面白い!」。
1.「白いリボン」(2009年 ミヒャエル・ハネケ監督)
ハネケ監督作品では、独身の女ピアノ教師が性の虜になる「ピア二スト」が有名だが、1914年に北ドイツの村で起こった連続怪事件が、第一次世界大戦、ナチスにつながる萌芽だとするハネケ監督は、やはり凄い。
ベルイマン風のモノクロ映画だが、ちょっと背筋が寒くなる。
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「白いリボン」(2009年 ミヒャエル・ハネケ監督)
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2.「パンズ・ラビリンス」(2006年 ギレルモ・デル・トロ監督)
この監督も、ハネケ同様今年発見した。
「パシフィック・リム」が大ヒットし、「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞を受賞したが、出世作「デビルズ・バックボーン」(2001年)とならぶ比較的初期の甲乙つけがたい傑作だ。
1930年代のスペイン内戦とダークファンタジーを組み合わせるという発想だが、映像のこだわり方が半端ではない。
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「パンズ・ラビリンス」(2006年 ギレルモ・デル・トロ監督)
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3.「哀しき獣」(2010年 ナ・ホンジン監督)
これはちょっと衝撃的。「よくある話」と思う人は、今後映画なんか観なくてよい。
これは人間の根源に迫る超絶アクション映画だ。韓国人って凄い。日本人では、ここまでやれない。
しかし朝鮮族なんていう人々が中国社会の底辺で生きてるなんて知らなかった。処女作「チェイサー」を早く観たい。
4.「私を離さないで」(2010年 マーク・ロマネタ監督)
原作は、ノーベル賞作家カズオ・イシグロ。
臓器提供者として、全寮制の学校に隔離された少年少女の恋愛譚。
原作の素晴らしさを見事に映画化していると思う。
悲しくて哀しくて胸がしめつけられる。
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「私を離さないで」(2010年 マーク・ロマネタ監督)
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5.「恋する惑星」(1994年 ウォン・カーウァイ監督)
「花様年華」「ブエノスアイレス」のカーウァイ監督作品。なかなか人生の哀愁を鮮やかに描く監督だ。
この作品も、トニー・レオンと金城武の2人が主演で香港の怪しげな雑踏を舞台に恋する男女を描く。ちょっとレトロで退廃的ムードがたまらない。
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「恋する惑星」(1994年 ウォン・カーウァイ監督)
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6.「マリー・アントワネット」(2006年 ソフィア・コッポラ監督)
「パンが無いならケーキを食べればいいのに」と人民のデモに言い放って断頭台の露と消えたフランス女王はこの映画には登場しない。
大ブーイングがカンヌ映画祭プレス試写で巻き起こったらしいが、この映画はいわゆるコスチューム・プレイのオシャレ映画。実際、衣装監督のミレーナ・カノネロ女史が三度目のオスカーを獲った。
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「マリー・アントワネット」(2006年 ソフィア・コッポラ監督)
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写真はこの映画の1シーンだが、特に奥のブルーの「コンバース」のテニス・シューズに注目!
18世紀末に存在するわけない!?ではなくて、その感覚の素晴らしさを讃えたい。ファッション関係者は必見だ。
7.「隠し砦の三悪人」(1958年 黒澤明・監督)
2008年に松本潤&長沢まさみでリメイクされて大失笑を浴びたらしいが、もっともな話。
とにかく、ノースタントの馬上殺陣とか、凄まじいド迫力。
変に文芸映画に走らず、こういう娯楽映画を撮らしたら、黒澤明に敵う監督はいないのだ。三船敏郎がまた素晴らしい。
8.「素晴らしき哉、人生!」(1946年 フランク・キャプラ監督)
アメリカが世界最強の国として君臨していた時代、そしてヒューマニズムがまだちゃんと存在していた時代の映画。
今回名作「ベルリン・天使の詩」(1987年 ヴィム・ヴェンダース監督)が、この映画の亜流・コピーでしかないことが、よく分かった。
徹底的に練られた脚本が名作映画の基本だということを教えてくれる。
主演のジェームズ・ステュワートが「アメリカの良心」と言われるのが納得できる。
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「素晴らしき哉、人生!」(1946年 フランク・キャプラ監督)
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9.「フライト・ゲーム」(2014年 ジャウム・コレット=セラ監督)
ハイジャック映画だが、サスペンススリラー仕立ての素晴らしい出来栄え。
監督は1974年生まれのスペイン人だが、この手の映画にまだ可能性が残されていたとは驚きだ。
動きが緩慢なダメ中年ヒーローとしてリーアム・ニーソンが注目され始めた映画だ。
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「フライト・ゲーム」(2014年 ジャウム・コレット=セラ監督)
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10.「クリスマスのその夜に」(2010年 ベント・ハーメル監督)
ベスト10の10作目は選ぶのに本当に困った。候補は「ラストベガス」、「アリスのままで」、「ロスト・イン・マンハッタン」、「ファーゴ」、「陰謀のシナリオ」、「アウトクローラー」、「J.エドガー」、文芸・歴史ものでは「ボヴァリー夫人」、「宮廷料理人ヴァテール」、「デイジー・ミラー」、「ワーテルロー」、ちょっと古くなるが「愛人/ラ・マン」、「危険な情事」、「キャリー」など。これらはまた機会があれば紹介したい。
で、選んだのは、クリスマスの夜を群像劇&オムニバス形式で描いたノルウェー映画。
北欧映画には、例えば名作「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」(スウェーデン映画)みたいに、人生の哀歓を淡々とかつ厳しく描くというジャンルがあるようで、この84分の映画もそのひとつ。観終わると感動がジンワリ来る。
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「クリスマスのその夜に」(2010年 ベント・ハーメル監督) |
(2018.12.31「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
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