酷暑の日本を離れて、7月末イタリアに行って来た。北イタリアのフランチャコルタというところだ。
ミラノ・マルペンサ空港から車でベネチア方面に高速を1時間半ほど走る。ブレシア県のイゼオ湖の畔にあるフランチャコルタ村である。
昼は30度ほどだが朝夕は20度~25度と涼しい。目的はもちろん避暑ではなく、ワイナリー見学だ。
フランス・シャンパーニュ地方のランスに行くと言えば、「ああ、シャトー巡りですね」ということになるのだが、北イタリアのフランチャコルタと言っても、「何ですか?」だろう。
しかし、もうちょっとしたら、このイタリア・スパークリングワインの最高峰であるフランチャコルタ(地域名がブランド名になることが許されている唯一のイタリアのスパークリングワイン)は、かなり人口に膾炙することになるだろう。
フランスのシャンパーニュ(俗称シャンパン、厳密にはシャンパーニュ地方産でなければそう名乗れない)に比べて、クオリティは同程度でも今のところ知名度が低いから、コスパが素晴らしい。
やはり、発泡性でないスティルワインについては、1980年代の日本でも、フランスの有名高級ワインに比して割安な、バローロ、バルバレスコなどのイタリア・ワインが日本マーケットに入り込んで行ったが、これと同じことが起こるのではないだろうか。
「ヨーロッパを知りたければ、ファッション、オペラ、サッカーを学べ」とことあるごとに書いて来た。書き忘れてしまったが、これにワインを加えなければならなかった。
なんて、偉そうなことを言ってもワイナリー巡りは今回が初めて。試飲の時に、飲みこまずに、あのスピッティング・ボウルに「ぺっぺっ」と吐き出すのが夢だったが、旨いので今回これができずに飲み込んでしまって結構酔った(笑)。
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スパークリングワインでなくてスティルワインだったら、ヘタバッテいたと思う。
トスカーナ(中部イタリア)、プロヴァンス(南仏)が日本では、観光地、避暑地としてすっかり有名になっているが、この北イタリア・フランチャコルタ村もちょっとした穴場的な魅力がある。
滞在中、日本人は、ときどき見かけたが、中国人はまだいないようだ。
水曜日昼の12時半に成田を発って、日曜日昼の10時半に成田に着いたから、正味2日の旅だが、その魅力を食べ物中心に、スマホで撮影した写真を交えて紹介。
1.鐘
ホテルでは、朝の8時半に鐘楼の鐘が鳴るのが聞こえた。仕事始めの鐘なのだろうか。
それからは、区切りの時間なのか10時とか12時に鐘がなる。きっちり時間通りではないから、人が叩いているのだろう。
なんとも心地よい鐘の音である。実に癒される。教会の鐘だろう。
ワイナリーでのランチ
いくつかのワイナリーの人々に会ってみると、「この人たちなら、日曜日に教会に行きそうだな」と思う。
村中にマリア像や聖人像が立っていて、そこには花が美しく置かれている。花と言えば、村中に咲き誇る赤い夏花。夾竹桃(きょうちくとう)らしい。
2.家庭料理
2日間で6つのワイナリーを見学したが、昼飯時に訪れたワイナリーではランチサービスをしてくれた。
ワイナリーでのランチ
まず、サラミ、ハム、生ハム、チーズなどがパンと一緒に出てきて、サラダ、パスタという感じ。
「Mosnel(モスネル)」社では、トマトとイゼオ湖の川イワシをアンチョビ風に使ったショートパスタ(エリーケ:螺旋ねじ状)。
これは旨い!!食べ過ぎ警報発令である。
「Vigna Dorata(ヴィーニャ・ドラータ)」社は家族4人でやっている小さなワイナリーだが、出してくれたランチのメインはライス・ズッキーニ・トマトのサラダ。
ライスサラダ
これも塩コショウとオリーヴ・オイルが絶妙な味加減。こういうのが食べたかったのである。
3.おふくろの得意料理
家庭料理と言えば、家族経営の「Osteria della Viretta(オステリア・デラ・ヴァレッタ)」という文字通り村のレストランという趣の店で、晩飯を食べた。
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オステリアというよりもトラットリアだが、1900年創業の古い店で、シェフの奥さんとホール係の旦那のコンビが絵に描いたようなイタリアの田舎の名店のそれ。
店の経営者夫婦
最近レストラン格付け本からかなり注目されているようだ。
「これは俺のおふくろ(マンマ)の得意料理だよ」が旦那の決めセリフ。
川魚料理
こういうノリのいいトラットリアはイタリア特有で、食後のグラッパまで愉しんでしまう。
4.「LAlbereta(ラ ルベレータ)」
正確には「ラ ルベレータ ・ルレ&シャトー」。泊まった五ツ星のホテル。
フランチャコルタの大手ワイナリー「「Bellavista(ベラヴィスタ)」のオーナーであるヴィットリオ・モレッティの長女が経営している。
貴族の館を改築してホテルにしているようだ。もちろん趣はあるが、水回りなど不便な点もある。
エステが有名らしく、世界中から女性たちがやってくる。しかし、いくら規則ではOKになっていると言っても、そこのおばちゃん、バスローブでレストランに朝食を食べに来るのはやめてね(笑)。
ラルベレータ ホテルからイゼオ湖を望む
このホテルの朝食はバラエティがなくて3日も食べれば飽きるが、眼前に広がるイゼオ湖の朝日にきらめく湖面が本当に美しい。
5.フランコ・ぺぺの「支店」
このホテルのもうひとつのウリは、ピッツェリアの「La Filiale(ラ・フィリアーレ)」。
イタリア語で支店という意味だ。なんという間抜けな店名。
しかし、このピッツェリアがナポリ、正確にはその近郊のカイアッツォに店を構えるピザ界の巨匠フランコ・ぺぺ監修の「支店」だと知れば、納得がいくだろう。
フランコ・ぺぺのスペシャリテ マルガリータ・スバリアータ
そうでなければ、この田舎のホテルまで、ミラノからフェラーリやマセラッティをぶっ飛ばしてピザを食べに来るはずがない。
この田舎町の男女とは思えぬ伊達男やイイ女が店を埋め尽くしているのだ。
私は、東京のイタリアンではピザを滅多に注文しないけれども、ナポリのピザは食べてみたいとは思っていた。
しかしピザが次から次に出てきてコースになるのだから参った。
とにかく軽くて、いくらでも入る。ピザ好きにはたまらないだろう。
ピザ コースの最初の皿 ピザ生地を軽く揚げて生ハムとクリームチーズ
イタリアンは東京が世界一と思っている私の迷妄を簡単に打ち破ってくれる。
(2018.8.25「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
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