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3月29日、東京・日比谷に東京ミッドタウン日比谷がオープンし、3カ月経過した今でも、予想を上回る来場者で賑わっている。

 一般の方にとって、あまり違いはないのだろうが、銀座と日比谷という隣接する2つの街は、販売のパワー(消費力)が3~4倍以上違う。つまり家賃も3~4倍以上違う別の街だ。

東京ミッドタウン日比谷

 どこが銀座と日比谷の境目かというと、首都高速道路の西側が日比谷、東側が銀座である。

 50メートルほどの違いに過ぎないが、昨年4月にオープンしたのが東急不動産によって開発された東急プラザ銀座であり、今年3月29日にオープンしたのは三井不動産によって開発された東京ミッドタウン日比谷である。

東急プラザ銀座

 東京ミッドタウン日比谷を企画・開発した三井不動産は、この東京ミッドタウンというブランド名を六本木で初めて使ったが、こちらは東京ミッドタウン六本木とは呼ばず、単に東京ミッドタウンである。

 同社では、これをブランド化して、都心の商業施設に日比谷以降も使っていこうということらしい。

 最近発表された東京ミッドタウンの年商は290億円と同エリア内のライバル六本木ヒルズにかなり水をあけたようだ。こんなこともあって、三井不動産はこのブランド名をよほど気に入っているようである。

東京ミッドタウン日比谷

 東京ミッドタウン日比谷は、都心の商業ビルとして、たいへん面白い作り方になっている。

 簡単に言うと、低層階では、徹底的に飲食店を中心にしたテナント・リーシングを行い、ラグジュアリー・ブランドはもちろんファッション・ブランドの誘致は積極的に行わない、つまり採算を度外視し来場者を増やすことで賑わいを重視しているようだ。

 具体的には、地下1階では駅直結のアーケードで、気楽に利用できるカフェやバーを集積。とくに肉バルや焼き立てパン屋やオイスターバーなど8つの飲食業態を集積した「ヒビヤフードホール」が注目だ。

ヒビヤフードホール

 1階では正面入り口から右手に登場するのは、日本初上陸のニューヨークの人気レストラン「BUVETTE」。NYでは街の小食堂として有名だが、ラタトゥイユやタルトタタンなどの家庭料理の品ぞろえが充実。ここで、朝食、ランチ、ディナーをすべて済ませるヘビーユーザーも多数現れそうだ。

 1階正面入り口から左手はレクサスのショールームとこれに付随するカフェと雑貨ショップがデーンと構える。

ザ・スピンドル:カフェ

 その隣は化粧品のセレクトショップ「イセタンミラー」が登場。さらにいくつかのファッション&アパレル関連のショップが3階部分まである吹き抜けの外周の円形のアーケードに顔を見せる。

 中では、今、OLに大人気の5万円前後のイタリア製パンプス「ペリーコ」の大きなショップが目を引く。

 2階に行くと、「ザ・ノース・フェイス」や「A.P.C.」や「THREE」(化粧品)などの人気ブランドはあるものの、飲食店とファッションの比率は飲食店が優勢。

ザ・ノース・フェイス(東京ミッドタウン日比谷2階)

 3階はインテリアショップと雑貨がメインの売り場だが、目を引くのは「HIBIYA CENTRAL MARKET」と名付けられた780平米の有隣堂がクリアティブディレクターの南貴之と組んで作った昭和レトロっぽい空間。

 これ自体で「小さな街」になっている。本屋も床屋も居酒屋も眼鏡屋もイヴェントスペースも揃っていて、暇な人なら半日は遊んでいられるだろう。これには、驚いた。まさに採算度外視の空間だろう。

 4階&5階は13スクリーンあるシネマコンプレックス(TOHOシネマズ)だ。来街者はもちろん、入居テナントで働く皆さん、映画を最新鋭のスクリーンで楽しんでほしいという訳だ。

TOHOシネマズ

 このシネコンも含め、さらに6階、7階にもある飲食フロアの売り上げを合計した初年度の売り上げ目標は130億円。採算点の半分程度の金額だ。私ばかりでなく、見学に来ていた大手不動産会社社員も驚いていた。

 それでは2500億円と言われる総事業費はどうやって回収するのか。それは10階から35階までのオフィスフロアで十分賄えるという考えなのである。

 日比谷駅直結の立地の良さに加えて、日比谷公園が眼下に広がる抜群の眺望を備え、高額の家賃(月坪5~6万円)にも関わらず、オフィス棟は人気が高くほぼ満室。

スカイ・ロビー(オフィス棟エントランス)

 低層階の商業施設はファッションのビッグブランドやラグジュアリー・ブランドの導入は最初から考えずに、飲食を中心にした人の集まる賑わいの館にしようというのが基本的な考え方のようだ。

 10から35階までのオフィスフロアに勤務するサラリーマンはほぼ1万人。ちょっとした町である。

 この人達のランチやアフター5を充実したものにするには、今まで書いてきたような質量とも万全な飲食店やシネコンが必要になるという訳なのだ。お買い物は銀座でしてください。

 我々は日比谷に集うワーカーのための快適な街づくりしました、とこのビルは言っているようである。

                

(2018.7.19「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

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