「windblue」 by MIDIBOX


3月19日から3月24日まで、東京ファッションウイークが開催された。自国のデザイナーを中心に5日ぐらいの間に、ファッションショーを披露するわけだが、世界にはかなりの数のファッションウイークがある。

 その中でもニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリで行われるファッションウイークは規模も大きく、セレブが招待されてファーストロー(第1列)で見ていたり、華やかなのである。

 パリに続いて一連のコレクション・サーキットの掉尾を飾るのは、東京コレクションだがバイヤーからも日本人以外のジャーナリストからもほぼノーマークである。

 私もファッション・ジャーナリストの端くれであるから、期間中に東京でいくつかのコレクションを観たので、その感想を書いてみたい。

    

 まず、「マメ/クロゴウチ」。今回一番注目されていたショーだ。

 デザイナーの黒河内真衣子(クロゴウチマイコ)は1985年長野生まれ(誕生年を公表するデザイナーは珍しい)。三宅デザイン事務所から2010年に独立し黒河内デザイン事務所を設立。

 「マメ」は独立してすぐ、バイヤーやジャーナリストから注目されていた。

 最近は資生堂新人賞とか様々な賞を受けて、その中にはパリと東京でランウエイショーができる賞があり、すでにパリでのショーでの賞を済ませ、今回は東京でのショー。

 品川シーサイドにオープンしたばかりのアマゾン ジャパンのスタジオで行われた。

 日本での売り上げが1兆円もあるのに、どうもファッションのアマゾンというイメージが希薄(そうは言っても5%でも500億円だが)なために、このスタジオを使って巻き返そうというのが、アマゾン ジャパンの狙いのようだ。

 「マメ」というのは、小柄で可愛らしい彼女のニックネームらしいが、マメに働くという言葉とかけているのではないだろうか。

 いくつかインタビューを読んでみたが、頭のよさそうな女性だ。しかも自分のイメージやコンセプトの実現には努力を惜しまない。

 ショーの当日に渡されたレジメには「ウィメンズウエアは戦闘服である」みたいなことが書いてあった(どうでもいいことだが、レジメにジャカードをジャガードと書くのはやめて欲しい。せっかく頭がよさそうに見えているのだから)。

 しかし戦闘服というには、美しく、丁寧に作りこまれた洋服だった。パリコレにデビューということで、かなり「盛った」感じ。

 「ドリス ヴァン ノッテン」の洗練には及ばないが、影響をが感じられたが、本来ショーをやるようなブランドではないと思う。

 次回はファッションショーをやるのだろうか。ちなみに、洋服が一番よく見えるのはファッションショーである。

 選ばれた場所で、モデルが着用し、選曲家が選んだ音楽に乗って照明を浴びてウオーキングするのだから、特にビジネス抜きで良し悪しを評価するジャーナリストにはラックに吊るされた洋服を見るよりははるかによく見えるのである。

    

 次にいつも注目されてブランドの「HYKE(ハイク)」のショー。

(※右の背景画像も「HYKE」)⇒

 中目黒の自社(ボウルズ社)の狭いスペース(スタジオ兼オフィスだという)でのショー。

 フロアショーと言うべきだが、招待状にはインスタレーションとある。

 モノトーンでミニマルにまとめられた素晴らしいテーラリングのコレクションで、ファンが多いのは分かるが、ダッフルコートやピーコートなど前々回とあまり変化がない。

 ちょっとマンネリではないだろうか。タンスの中がコートとダウンだらけになってしまう(笑)。


(※「ハイク」のショーに訪れた「マメ」の黒河内真衣子デザイナー)

 ところで、このブランドは昔「グリーン」と名乗っていた。

 夫婦でデザインしていて、奥さんが妊娠して、なんと生活の方が大事だと、ブランドをやめてしまった。

 それを「情けない」と私が批判したら、私への凄い数の批判(「人にはそれぞれ生き方がある」)があったのをよく覚えている。

                

(2018.5.31「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

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