「windblue」 by MIDIBOX


別に今に始まったことではないが、日本人の特に女子は横並び意識が強くて、髪型や髪色、ファッションや雑貨、メイクに至るまで他人と異なることをするのを避ける傾向が強いと言われている。

 仲間はずれになるのが嫌なのだ。最近そういう女子はシニカルに量産型女子と呼ばれている。だからあるブランドがいつの間にか巨大化する。

 とくにハンドバッグでその傾向は顕著である。最近だと「フルラ」「マイケル コース」「トリー・バーチ」「ケイト スペード」などの中価格帯の海外ブランドが大きく売り上げを伸ばした。

kate spade

 海外ブランドだとそれ以前は「コーチ」、まだ景気の良かった1990年代だとラグジュアリー・ブランド「ルイ・ヴィトン」がそうした量産型女子に選ばれて量産ブランドになった。

 最近は景気も悪い上に節約志向が進んで、スウエーデンのブランドの「フェールラーベン」のカンケンバッグとか日本のブランドの「アネロ」などの6500円から1万5000円の低価格リュックが量産ブランドになった。

 この20年で日本の代表的な量産型女子の圧倒的な支持を集めたのが「サマンサタバサ」である。

    

 これを企画してきた企業はサマンサタバサジャパンリミテッド。一時期は女子大生の憧れのブランドだった。

 購入する女子のほとんどは、ブランドはアメリカのブランドで、企画・販売している会社はアメリカの企業だと考えていたようだ。

 サマンサタバサジャパンリミテッドの作戦勝ちである。50年ほど前に日本で大ヒットしたアメリカのTVドラマ「奥様は魔女」の奥様役の名前がサマンサ、その娘がタバサで、それをくっつけた名前である。

 私のように、TVで「奥様は魔女」を実際に観た人間にとっては、人を食ったブランド名だが、知らない若者にはオシャレに響くらしい。

Samantha Thavasa

 このサマンサジャパンリミテッドを創業し現在率いる寺田和正・社長はなかなかのアイデアマンである。

 1994年に「サマンサタバサ」を始めたときも、大富豪の娘たちヒルトン姉妹をイメージキャラクターにして、いかにもアメリカのブランドらしい雰囲気を醸し出すことに成功していた。

寺田和正社長

 その後もジェニファー・ロペス、キャメロン・ディアス、道端ジェシカ、ビヨンセなどのキャラクター使って、「女子大生の憧れ」をかきたてた。

 最近では、AKB48、EXILEのTAKAHIROなどのキャラクターも使い始めていたが、なんと言ってもミランダ・カーの起用が大成功した。ヤンママにして女子大生のようなフレッシュさを併せ持つ奇跡のキャラクターである。

 こんな具合に圧倒的に幅広い顧客層を獲得するに至って、量産型女子御用達のブランドになった。女子大生から若奥様までまんべんなく支持を獲得している。

 しかし創業以来23年で主力のハンドバッグは250億円の規模。そろそろ供給過多が気になる水準である。

 それに、若いキャピキャピした女子大生の支持が「サマンサタバサ」にとっては生命線である。そこで新たに導入したのが「ミレニアル」というコンセプトである。さすがだと思う。目の付け所がいい。

Samantha Thavasa

 ミレニアルというのは、今世紀に入ってから、つまり2001年以降に成人になった人々である。20歳から36歳までの女子である。

 ミレニアル世代の特性としてデジタルネイティブであることがまず挙げられる。インターネット接続のOSウインドウズ95の発売は1995年である。

ウインドウズ95

 またアメリカ同時多発テロ(2001年)、イラク戦争(2003年)、リーマン・ショック(2008年)、東日本大震災(2011年)、IS建国宣言(2014年)などの事件・惨事が相次いで意外にも共感・連帯を求める気持ちが強いと言われている。

 サマンサタバサジャパンリミテッドでは、ミレニアル・スターズを最近結成して、お披露目を行った。

 シルベスタ―・スタローンの娘であるシスティ-ン・スタローン、ライオネル・リッチーの娘のソフィア・リッチー、ケイト・モスの妹のロティ・モス、ジェイデン・スミス(ウィル・スミスの息子)と交際していたことで注目を集めたサラ・シュナイダー、クインシー・ジョーンズの娘であるケニア・キンスキー・ジョーンズの18歳から24歳の5人。

ミレニアル・スターズ

 ある意味で「サマンサタバサ」の原点に戻ったようなフレッシュな感じがする。

 この5人に加え、ファッション・デザイナーの二コラ・フォルミケッティをプロデューサーに「スイート&クール」をテーマに、ニューヨークのクールと東京のKAWAIIを掛け合わせて、改めて日本を代表して世界と戦えるブランドを目指すという。

 そもそもサマンサタバサジャパンリミテッド自体が1994年創業のミレニアル企業であり、次のステップの成果を期待したいものだ。

                

(2017.8.30「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

PAGE TOP


banner Copyright(C) Miura Akira&Habane. All Rights Reserved.