「windblue」 by MIDIBOX


暑いですなあ。ホントに。こういう時は居間でTV映画でしょ。

 御多聞にもれず、スマホ中毒と老眼で本を読むのがかなり面倒くさくなった。

 休みの日に映画館に行くなんていうのも億劫になっているから、映画はTV録画ということになる。

 レンタルすら億劫なのだ。なんとも情けないことである。しかし、それで十分なペースである。

 しかしこう暑いとそのペースが上がる。ここ1カ月に観た4本の映画の感想を綴ってみた。

①スローターハウス5(1972年 ジョージ・ロイ・ヒル監督)

 ジョージ・ロイ・ヒルは「明日に向かって撃て」(1970年)の大ヒットの後、「スティング」(1973年)を撮るまでの間に、この「スローターハウス5」を撮っている。

 プロデューサーから大ヒットのご褒美に好きな映画を好きなように撮ってよろしいと言われ、この映画を撮ったらしい。

(※右の背景画像:「スローターハウス5」ポスター)⇒

スローターハウス5

 原作はカート・ヴォネガットの自伝的な時間旅行の話。まあ、ハチャメチャな映画だが、私は「明日に向かって撃て」よりは数段好きである。

 おまけに音楽が奇才グレン・グールドの担当でそのピアノが素晴らしい。

 余談だが、ヴォネガットがアイオワ大学で教えていた学生には「ガープの世界」を書いたジョン・アーヴィングがいる。

 「ガープの世界」は大ベストセラーで映画化されている。この映画は必見である。

②ウォーターボーイズ(2001年 矢口史靖・監督)

 「Shall weダンス?」とか「シコふんじゃった。」「おくりびと」とかこういう感じのテーマが日本映画には向いているんじゃないだろうか。

 その源泉は伊丹十三映画だと思うが。この映画、竹中直人がちょっと濃すぎるが、ギリギリ楽しめる。

ウォーターボーイズ

 水を抜いたプールに魚がぴくぴくしているシーンでマーラーの交響曲第5番の第4楽章アダージェットが使われているのはなぜだろう?

 ともあれ妻夫木聡や玉木宏がブレークするきっかけになった映画だ。矢口史靖はやぐちしのぶと読むらしい。

 彼の映画の主人公はわずかな例外をのぞき鈴木という姓なのだという。「ハッピーフライト」なんか面白そう。TVで放映しないかな。

③フォレスト・ガンプ/一期一会(1994年 ロバート・ゼメキス監督)

 大ヒット映画を封切り23年後に観るというのもなんだが、まあ許せる範囲のアメリカン・ヒューマンな感じで、可笑しくてやがて哀しきという感じは悪くないですが。

フォレスト・ガンプ/一期一会

 初期のアップルに投資して大金持ちになったフォレストのもとに戻ってきたジェニーは、フォレストと初めてSEXした次の朝、なんで家出したんだろう?

 難病に冒されているのをすでに知っていたということ?サブタイトルで一期一会をつけたい気持ちはわかりますが、そりゃないよ。

④ゲームの規則(1939年 ジャン・ルノワール監督)

 トリュフォーやゴダールなどフランス・ヌ―ヴェルバーグの映画監督から父のように慕われていたのが、画聖オーギュスト・ルノワールの次男のジャン・ルノワールである。

 彼の「大いなる幻影」とこの「ゲームの規則」が2大傑作に挙げられるが、こちらは今の今まで観ないで来てしまった。

 古い映画だろうと思うだろうが、バルザックの小説が古いと思う現代人がいないように、新しいとは言わないが、全く古びていない。

 それと職業柄、この映画の衣装担当がココ・シャネルというのも興味を倍増させた。

ゲームの規則

 思った通り、侯爵夫人の部屋着から夜会服、狩猟用のファッション、その女召使の実に現代的なスーツファッション、さらに侯爵の愛人のもっとくだけたセクシーなファッションやオリエンタルな部屋着などなど、1939年あたりのココ・シャネルの絶頂期を思わせるファッションがこれでもかこれでもかと登場してくる。

 ブラボーとTV画面に声をかけたくなる。そんな中、侯爵の女召使が、夫からコートを送られるシーンに注目した。

 夫が「完全防水で温かいよ」と言うと、女召使は「デザインが犠牲になっているわね」と応じる。ストーリーには全く無関係なやり取りだ。

 私の勝手な想像だが、撮影現場にいたココ・シャネルが監督にわがままを言って、この台詞を言わせたのではないだろうか。

 いかにもココが言いそうな言葉である。

                

(2017.7.27「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

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