「windblue」 by MIDIBOX


出版不況、新聞不況が続いている。というより、当たり前のことになっているのだが、“不況”という言葉はもはや適切ではないだろう。

 出版業界は未だに好況時の高コスト体質だから赤字にもなる。

 読者の支持が得られなくて、他に代替メディア(たとえばインターネット)があれば、雑誌は売れなくなる。

 昨今はお金を出すことに、人は本当にシビアになっているからだ。

 特にメンズ雑誌が厳しいというが、これには至言がある。

 雑誌広告協会理事長でもある光文社の並河良・会長が最近のメンズ雑誌業界を評していわく、“野ざらし現象”。

落語「野ざらし」

 落語の「野ざらし」をご存知ない方のために説明すると、長屋に住む男が深夜妙齢の美女が隣家の男を訪ねて来るのを目撃し、翌日その経緯を尋ねると、川に釣りに行って髑髏(どくろ)を釣り上げてしまった隣家の男がその髑髏を温めて成仏させてやると、お礼に女が深夜訪ねて来たのだという。

 それを聞いたお調子者は、「それなら俺も!」と川に釣りに出掛けて珍騒動になるというもの。

 簡単に「レオン現象」と言ってしまえば身もフタもない。

 「モテたい!」と思う男たちの浅はかさ、隣人がイイ思いをしたのなら「俺だって!」というスケベエ根性。

 登場人物の誰が現実の誰ということもないが、今のメンズ誌業界の混乱とバカ騒ぎ後の氷河期を言い得て妙である。メンズ誌に限らずに、出版業界は総じて“野ざらし”なのである。

                

 

 それではと、ウェブマガジンとやらに目を転じてみる。

 「野ざらし」でイイ思いをしたはずだが、追放・島流しを経て、現在は「KISHIDA DAYS」なるブログを展開中の岸田一郎氏も、人生の荒波に揉まれたせいか、だいぶ丸くなった印象。(※右の背景画像)⇒

KISHIDA DAYS

 「レオン」(主婦と生活社)を擁し「チョイワルおやじ」を始めとして数々のヒットコピーを生み出した岸田氏だが、今は自らのキャラでタイマン勝負というわけだ。

 いいんじゃないですか?

 若い人はご存知なかろうが、かつて一世を風靡した三木のり平(わずかながら現在、桃屋の海苔佃煮『江戸むらさき』のメガネをかけた変なオジサンキャラとして生きている)をホーフツとさせる岸田の兄貴は、実に、ギリギリでバカっぽさにも陥らずオヤジのオイタをしている感じ。

 「君、これからはホテルのプールでバタフライで泳ぐのがトレンドだよ」と言い放ち、本気でバタフライ泳法を練習していたオヤジだ。

 まだまだ若いモンには負けませんよ。結構オモロイけど、まあ月に2回も見ればいいだろうな。

 顧問だか役員に祐真(朋樹)クンとか坂本龍一・教授だとか「エンジン」の鈴木正文・編集長が名を連ねるウェブマガジンの「オウプナーズ」は、やっぱり欲望喚起装置クサイ!

OPENERS

 なんかタイアップじゃねえのかと疑ってしまうコンテンツがテンコ盛りという感じ(そうじゃないとしたらさらに問題だが)。

 これも月1回見りゃいいな。

 それに比べると、「ハニカム」はシャープな印象で、「ああ、ココ押さえておけば時代にシンクロできるんだな」という感じはするな。

Honeyee.com

 「三浦さん、遅れてますよ」と言われないためにも、ちょくちょくのぞいてみるか。

 別に50過ぎのオヤジが時代に乗り遅れても、どうってことはないんだけどね。むしろ「乗り遅れの美学」というのもあるくらいだからな。

                

(2009.3.7「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)



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