2015年のファッションの世界で流行語大賞を与えるとすれば「ノー・ジェンダー」ということになるだろう。
「グッチ」のクリエイティブ・ディレクターに就任したばかりのアレッサンドロ・ミケーレが1月のミラノ・メンズコレクションで発表したコレクションが発端だ。
「この子は男なのか女なのか」。
(※右の背景画像:緑のレザージャケットは右前になっているウィメンズウエア。グッチ。)⇒
メンズウエアを意識したウィメンズウエアとか、スカートをはいた男たちとか今まで「ジェンダー」を超えたファッションの提案はいろいろとあった。
しかしそのいずれもが女性の社会進出促進=ウーマン・リブとか「男だってスカートが穿きたいのだ!」というようにメッセージ性が強いものだったが、今回はもっと自然な形で出て来た。
この他にも「シェアード・ワードローブ」という言葉も今年注目されたが、これもノー・ジェンダーから派生した言葉だ。男女がお互いの洋服をシェアし合うという意味だ。
そのためにはシェアし合えるようなノー・ジェンダーな服が必要になる。そうすれば買う洋服も半分に済み、実にエコロジカルだという発想だ。
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男なのか女なのか |
いずれにしてもファッションの世界で「ジェンダー」がこれほど大きく取り上げられるのは久し振りだ。
LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)という言葉が一般化しているが、日本でも渋谷区と世田谷区で同性婚者に対して異性婚者と同じような権利が与えられるなど、セクシャル・マイノリティーが一般人と同じ権利を主張するような動きが多く見られた。そうしたこともこの「ノー・ジェンダー」ムーブメントとは無縁ではないだろう。
今年のファッション界のもうひとつの流行語は「アスレジャー」だ。「アスレチック:運動競技(athletics)」と「レジャー:余暇(leisure)」からなる造語だ。
アメリカで注目されているが、ヨガパンツなどのスポーツ用ウエアを日常着としてオシャレに着こなすスタイルである。
「オシャレに」というのがポイントで、無造作にナイキやアディダスのジャージー素材の上下を着て、ツッカケと呼ばれるサンダルをはいている日本特有のオジサン・オバサンルックとは異なるので注意してほしい。
さらに10月のパリコレで登場したトレンドが「グランピング」。グラマラス(glamorous)とキャンピング(camping)を組み合わせた造語だ。
ホテルなどが提供してくれるキャンプのことで、自分たちでテントを張ったり火を起こしたりする必要もなく、手軽で贅沢なキャンプを楽しむことができる。
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グランピング・ファッション。ブランドはバレンシアガ。
こんな格好で用意されてるラグジュアリーな
キャンプを楽しむわけですな。 |
このグランピングに着て行くファッション・スタイルがグランピング・ファッションだ、ほどほどにゴージャスだがカジュアルなテーストも必要とするファッション上級者向けのスタイルだ。
とにかく世の中のライフスタイルを語る上で「スポーツ」「アウトドアライフ」という大きな流れを無視することはできなくなっている。
(2015.12.19「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
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