どうなっちゃったんだろうと思うほど街中にスニーカーが溢れている。今に始まったことではなくて、実はもう3年ほど前にこのブームは始まっていた。
もうブームも終わりだろうといつも思うが、そんなことはなくて、また今年も街中のスニーカーが増えている。これはもう、ブームではなくて、スニーカーが、パンプスや革靴の代わりとして堂々の市民権を獲得したと思わざるを得ないのだ。
スニーカーが日本のファッションシーンに本格的に登場したのは、1995年に発売されたナイキの「エアマックス95」が最初だろう。日本の若者にとってはまさにカルチャーショックだった。
本来「運動靴」と呼ばれていたものが「スニーカー」に呼び名を変えて爆発的な人気を呼び、ついにはエアマックス95を履いた人間を襲撃し奪い取るという「エアマックス狩り」が頻発し社会問題になったのだから、その衝撃の凄さがわかるだろう。
一時沈静化したが、90年代ブームとして3年前にリバイバルしているように思われたのが、どうもそうではなさそうだ。
21世紀に入ってから、これはただのブームだろうと思ったものが完全に市民権を得たケースには、デニム(ジーンズ)があるが、あれもいつの間にか市民権を得て、キャリア女性たちが通勤に着るだけではなく社内でも平然とはくようになった。
このファッションの市民権というやつだが、保守系大手企業がいつの間に社内規定からはずすようになることを意味する。つまり「社内ではジーンズやスニーカーの着用を認めない」という規定があって、いわゆるオツボネ様と言われる女性から、その着用者には厳重な注意がなされて、社内の秩序が保たれて来たのだ。
しかし、どうもジーンズに続いて、このスニーカーもよほどの保守系大手企業でもない限り、ついに市民権を得た感があるのだ。
手前ミソで恐縮だが、8月に発売になったWWDジャパン マガジン秋号は「世界で一番おしゃれなスニーカーを探せ!」を特集している。
(※右の背景画像)⇒
その中でスニーカーの魅力について、千原徹也(ちはらてつや)アートディレクター・れもんらいふ代表は「楽(ラク)+楽(楽しい)」。
ビームス創造研究所の南馬越一義(みなみまごえかずよし)シニアクリエイティブディレクターは「オールドスクールもハイテクも基本的には機能に基づいたデザインのカッコよさがあり、ウンチクを語れる」。
untlim(アントリムPR)代表でPRディレクターの小塚源大(こづかもとひろ)は「衝動買いの連続ができるところ」。
広告代理店コスモコミュニケーションズの斉藤良(さいとうりょう)・アカウントマネージャーは「ファッションでありながら、機能面での深さがあるところ」。
スニーカーのセレクトショップUNDEFEATEDのスタッフの山田一徳(やまだかずのり)は「人に語りたくなる」。
~こうしたスニーカー・マニアの声を聞いているとその魅力は機能性という裏付けがあって、ウンチクを語れて、なんと言っても楽(ラク)だということに尽きるようである。
おまけに価格が革使いの靴に比べて安価であるから衝動買いの対象になるということも大きい。
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シャネル 2014年春夏
オートクチュール
コレクション
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最近のスニーカーブームを決定的にしたファッションショーがある。
昨年1月に発表されたエレガンスの極みとも言うべき「シャネル」の2014春夏オートクチュール・コレクションにスニーカーが登場したのだ。これもまたサプライズだった。
【セリーヌのスニーカー】
それまでシャネルのプレタポルテのショーにスニーカーが登場したことはあったが、超・富裕層を対象にしたオートクチュール・コレクションのテーマにスニーカーが取り上げられたのだから、ラグジュアリーの世界でも市民権を得たことになる。
これを機に昨年から一斉にラグジュアリー・ブランドの高級スニーカーが続々と登場している。
とは言っても、せいぜい10万円前後。もうハンドバッグやパンプスに手が届かなくてもスニーカーでカジュアルにおしゃれを楽しみたいというファンは多そうだ。
(2015.11.12「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
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