「音楽の友」2月号の「音楽評論家・記者43人が選ぶ2014年コンサートベスト23」で、新国立劇場「パルジファル」(10月公演)が第1位に選ばれた。さらに同劇場「死の都」も12位に選出。特に「パルジファル」については、9月に就任した飯守泰次郎・新芸術監督体制への期待の現れだろう。
円安が進んで海外からの一流オペラハウスの来日公演が減少している(ちなみに前述のランキングではローマ歌劇場の「シモン・ボッカネグラ」が7位、フランス国立リヨン歌劇場の「ホフマン物語」が同じく7位だった)。新国立劇場が果たす役割はますます大きくなっているようだ。
来日の海外一流オペラハウスのフルプライス(S席で5万円)の半分で遜色ない公演が同劇場で楽しめるということがもう少し知れ渡っても良いと思う。
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第2幕 オルロフスキー公爵邸でのパーティーシーン
撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場
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さて、その新国立劇場で2月1日(日曜日)2時からヨハン・シュトラウス2世のオペラ「こうもり」を観た。
格調高い上演だったが、あまり笑わない私を10度ほど笑わせたのだから、文句を言う筋合いではないのだが、いくつか希望を述べたい。箇条書きにすると:
1.上演日程だが、「こうもり」はやはりお屠蘇気分が抜けない1月の早い時期が希望。
2.約10分かかる序曲の演奏中、紗幕を見続けるのはかなりシンドイ。カルロス・クライバーが指揮しているわけじゃないから、バレエとかパントマイムとかを見せて欲しい。
3.この演出で、2006年、2009年、2011年に次いで4回目公演というのはさすがにどうだろう。ハマリ役とは言え、主役のアイゼンシュタイン役が2011年に続いて同じエレートというのはどんなものか。しかしエレートは演技も歌も踊りも上手すぎる。
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第3幕 刑務所で茶番劇。左から刑務所長、抹茶色のドレスを着た
小間使いのアデーレ、刑務官のフロッシュ、アデーレの姉のイーダ
撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場
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4.劇中の狂言回し役のオルロフスキー公爵役というのが難役でやはり弱い。さらに刑務官のフロッシュ役が物足りない。この役はビートたけしやタモリクラスとは言わないが、有名タレントを起用して思い切りふざけてほしい。ついでに言えば、アデーレ(抹茶色のドレスが地味すぎ)の姉のイーダ役も1999年公演の時は草刈民代を起用したことがあるのだから、有名女優を起用して話題を作った方がいいように思うが。
タラタラ不満を述べたが、新国立劇場の格調高い原語上演にはそれなりの良さがある。このシャンパンの泡が弾けるような楽しいオペラを聞いていると、意味もなく悲しくなったり懐かしい気持ちになってくるから不思議である。
すでに没落の長い長い黄昏が始まっているパプスブルク家を彷彿とさせるためなのだろうか。それが長い衰退の坂道をゆっくりと歩き始めた我が日本とダブって見えるためなのだろうか。
おもしろうてやがて悲しき蝙蝠か
(2015.2.6「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
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