WWDジャパン1月5日号の「1億総デザイナー時代/近未来の服作りを徹底的に検証!」を最近読み返した。
横山泰明・記者によるこの特集、ちょっと構成が雑然としており、また正月早々ということもあり、さっと見ただけだったが、ちゃんと読み返してみると、なかなか面白い内容なのだ。
しかしデザイナーが不要になって、消費者が自分の好きなデザインをそれぞれ3Dデザインソフトを使ってパソコン上でデザインして、それをファクトリーに注文して、2週間程度で手に入れるというような時代が来るのだろうか。
(※右画像:セーレンのパーソナルオーダーシステム「ビスコテックス」からカメラと連動したサイネージ)⇒
「デザイナー不要論」ということになるが、実際のところODMを使っているSPA企業やアパレルメーカー(卸売りメーカー)の社内にはすでにデザイナーがいない企業もあることはある。
もちろん依頼をうけたODM企業内にはデザイナーはいるのだが、彼等はクリエーションとは程遠い「デザインワーク」をしているのである。
ところで3Dデザインでパーソナルデザインをする消費者は、何をイメージしてデザインするのだろうか。
余程才能ある人でなければ、ファッション雑誌を見ながらプリントはこの「ドリス ヴァン ノッテン」、襟は「サンローラン」、袖は昔の「ジバンシィ」なんてことになるのではないか。
ファッション・ボキャブラリーがある人なら、そんな具合いだろうが、それも貧困な人なら、まあパソコンの前に座って行き詰まり、「ああ面倒くさい!!」と30分もすれば放り出すのではないだろうか。
アダム・スミスの例を持ち出すまでもなく、分業化することで生産性が上がり、経済効率が向上するという良循環が生まれてくる。
あり体に言えば「それぞれの得意分野を生かす」という当たり前の原理から分業あるいは専門化という概念が生まれて来たのである。
漁師にしてデザイナーにしてコンピュータ技師なんていうスーパーマンは本来、現代にはなかなか存在しないのである。
企業内での使用例は急速に増えそうだが、1億総デザイナー時代はまず訪れないのではないか。
ごく一部の、上述したようなファッションボキャブラリーが豊富でかつパソコンソフトに通暁し、暇を持て余しているような人物、これが3Dデザインソフトのメインターゲットになるのではないだろうか。
ついでに付け加えると、かつてよく使われた常套句である「消費者の嗜好やライフスタイルが多様化し......」というのにも疑問が湧いてくる。
「その結果、多品種小ロット化が進み」と私自身もよく書いたけれど、本当にそうなのだろうか。
ラグジュアリー・ブランドでも上位ブランドのシェアが拡大しているのは周知の通りだし、「ユニクロ」を手掛けるファーストリテイリングが昨年8月決算で1兆円企業になったし、H&MもGAPも「ザラ」を手掛けるインディテックスもすべて1兆円を超える年商である。
どうも「多様化」とはほど遠い現実なのだ。
「木を見て森を見ず」と言いたいが、私が「森を見すぎている」のだろうか。
(2014.5.13「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)
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