<soul-83> オールディーズな若者たち
「お前見ててわかった。他人を、分かったつもりで満足したって、相手の全部なんて理解できねんだよ。
それでもいいとこあるって思わなきゃ・・ そうじゃなきゃ、誰の事も、結局こっちが理解できない」
「・・・・・あんたって」
真野は一瞬言葉に詰まった。
顔をしかめる明に、真野は諦めに近い吐息を吐く。
「あんたには本当驚かされるわ。
何にも考えてなさそうなのに、色々気持はあんのね。
あたしより頭いいかも。心が。
さ迷って見た他の人の感情や考えも、あたしのただの被害妄想って言われれば・・・反論はできないよ。
・・・・ それはわかんのよ?
・・・・まんざら悪い面だけで、みんながみんな、できてる訳じゃない・・・って」
「色んなやつ居るからな。全部否定はできねーよ」
そう心からこぼす明の真摯な発言に、真野は我知らず素直な言葉を口にした。
「そうは思っても・・・結局あたしって人は、否定しちゃうのよ・・・・
なんでもかんでも。駄目だね」
「駄目な奴なんて居ない・・・ここの連中見てたら分かんだろ?
みんなテキトーだぞ?」
真野はそこまで言われて、 幽霊を庇う意思とは関係なく、ハッキリと、今は明の言葉の方を信じた。
その上で、たった一言を口にしようとしたが 「帰」 そこまで出かかって、本心の、 『帰れるのかな?』 その言葉をまだ飲み込んでしまった。
明が真野の言葉の詰まりに気付き、続きに傾聴しようとより近づこうとした瞬間、 木製の間仕切りが自動式かと思われるほど、勝手にパタパタと折り畳まれていき、奥の更に奥があるのかと思われる方へ、音もさせずに暗闇に消えていった。
一瞬注視する明達の視線の先に、間仕切りのあった辺りの奥から、見知らぬ若人が、わらわらと前触れも無しに現れい出た。
見知らぬ若者たちは、二十歳前後の華やかかつ賑やかな集団で、最後尾に、先ほどまでの黄色いTシャツ姿のままの少年の十勢をトボトボと引き連れて、明達の方へやって来る。
何が起きたのか皆目見当が付かず、明が呆然としていると、 幽霊たちが居た筈の場所から出て来た若者たちは、一見恰好も珍しく、アメリカンオールディーズのワンピースドレスも派手な赤地に白の大きな水玉模様や黄色にチェックの柄、男性は黒に襟と縁取りの色が違う開襟シャツや、サックススーツに似たものを着こんでいる。
果てはジーンズにTシャツはいいのだが、ヘアスタイルまでポニーテールやリーゼントに決めて、ぞろぞろ明と真野の前まで集まった。
真野は自分の不安を押しとどめて、やや作ってはいたが、笑みを浮かべた。
「相変わらず、お見事」
褒める言葉に、明達の所まで来た若者たちは、口々に、はしゃぎだした。
【2016.9.4 Release】TO BE CONTINUED⇒