<soul-76> 明の疑問
声を荒げ、食ってかかる福喜に、明は慌てて、
「違う!! いいから、少し聞きたいんだけど」
「今は話を聞いてる暇はないんだよ。後にしとくれ」
「肝心な事だから!」
強く推す明に、流石に福喜も明には見て取れなかったが顔をしかめ、壁に付いていた腕を外し、背筋を伸ばすと腕を組んで、体をあらたに斜めに構えぶっきら棒に聞いてやる姿勢を取った。
「何だい」
明は薄ぼんやりとしか表情の読めない暗さの中で、慎重に福喜に聞いて見た。
「・・・・・まだ、信じた訳じゃないけど・・・・
・・・・死んだら・・・
皆、こう言う儀式めいたのして成仏しなきゃ・・・いけないの?すんの?」
「生きてるもんは、知らなくていい事だよ」
にべも無く突き放す福喜に、明は怯まず
「・・・・・でも、俺ここに居るし・・・・」
福喜は、足をタンタンと踏みならして、苛ついてはいないが、せっかちな態度を取った。
「・・・知らないよ」
「え?」
「成仏の仕組みや成仏した後どこへ行くのかあたしら霊ですら知らないのさ」
「え・・・・・そうなの?」
「ああ。通常の霊も知らないね。
知ってる霊って言やあ、ここに居る死後の世界へ行きそびれた連中だけだからね。
あたしらもこうやって集まって成仏するもんだって先んじて言ってた奴らの真似してんのさ。
でも実際、先のそいつらは消えたんだから、成仏したんだろうよ」
「・・・・消えるって・・・・・あんたら怖くないの?」
「一度死に際を味わった身さ。
あたしら自身が、超常現象・・っつーのかい?
まあ、あたしに言わせりゃ自然現象の一部になっちまったからねぇ・・・消えるかどうか、どこかに辿り着くか、ここまで来たら、腹もくくるさ」
明はまだ消化しきれない様に眉間に皺を寄せ、顔が暗がりから、たまに光の加減で見え隠れする福喜の頬の辺りを見つめながら
「・・・・何でダンパ・・ダンスなの?」
「バンドが居りゃあダンスも踊るさ」
「・・・・」
言葉だけで言い切る福喜に、明は怪訝さを払拭できないでいると、福喜は
「幸いうちの孫はバンドを生業にしてるからね。丁度良かったよ。そんな事より、お前に頼みたい事が」
明は話しを遮って、福喜の方に顔を向けてはいなかった。
福喜も吊られて、ついそちらの後方を軽く振り返った。
【2014.3.3 Release】TO BE CONTINUED⇒