<soul-75> 死後の世界
ふと、明は隣の希和子に問いかけて見た。
幽霊連中のなかで一番ひょうひょうとした風情があるのが希和子だからだ。
「死後の世界ってあると思ってんすか?」
「さぁ?
信じればあるかもしれないし・・・・死ぬって事は・・離れるって事ね。 愛する人から親しい人たちから。自分からも。
はぁ、もうスケベエなことさえできゃしないわ」
「は?」
「明君、相手してくれる?」
ぶんぶん首を振る明に
「寂しくてやり切れないからこうやって集まって勢い付けるのかしらねぇ」
そんな風にニコリッと笑うと、フワアッと更紗の袖を振るって、踊る様に一回転して見せた。
それは優美な演武の様で、明だけでなく、幽霊連中の眼も引き、ボーッとした視線がほんわりした雰囲気を作ろうとしたメンバーめがけて、福喜のどら声が響いた。
「皆―!ステッポの確認は万全だね?後は歌手が来る前に衣替えと行こうじゃないか!」
「もう来るんか?」
半信半疑な助八に、福喜と一緒に戻って来たツテは、答えの代りに
「よいしょっ。じゃあ目一杯着飾ってこようじゃないかい」
そう発言すると、どれだけ曲げていたのだと言う腰を容易く伸ばして、みんなを手を振って促した。
幽霊連中がぞろぞろと列をなして、どこへ行くんだ?
明が疑問に思う間に、奥の何か白っぽい物が地面に盛ってある所に向かって行く。
良く良く見ると、白い物体は、盛り塩がしてある様だ。
不思議に思いながら、明は着いて行かない真野に、フッと気が付いて声を掛けようとした。
「ギャルは」
言いかける明を、有無を言わさずに福喜が、明の腕を力任せに引っ張って、照明の届かない、隅の方へ連れて行こうとする。
「?? 何だよ?なんなん」
驚いて口ごもる明に、
「ちょっとおいでな」
そう言ってグイグイ引っ張ったままの福喜は、真野の視界から完全に自分と明が消えたのを確認してから立ち止った。
壁際に、長身の福喜は腕を壁に付き、男性が口説く時の様な寄りかかったポーズで明に迫った。
威圧され、腰を入れて若干小さくなった明は、暗さに眼を凝らしながら、影で顔が見えない福喜の体を振り払えずに問いかけた。
「バ・・・福喜さん!」
「バカ福喜さん!?」
【2014.2.4 Release】TO BE CONTINUED⇒