<soul-74> 死んでから分かる事
仙吉はとうとうと言って聞かせた。明だけでなく、その場全員の、自分の言葉が聞ける者たちに語りかける様に。
「生きてるうちってーのはな、おいらと違って、疑問に思ったりするくれーで丁度いいのさ。死んだら自然と変われねーが、生きてる内は変われるからな。 止まった様に見えても、止まったままってこたあねえから。明日は毎日やってくるだろ?」
明は言い返せずに、唾を飲み込んだ。
言い返す事は出来るのだが、この仙吉の持論が、もしかして本当に死んでから分かる事だとしたら、むげに扱う気になれなくなっていたのだ。
思い当たる節がある幽霊連中は、仙吉の言葉に眼を見交わして黙ったが、露子が感動したらしく、溜息交じりに閉じた口を開いた。
「ハア・・
そうですわよね。あたくし・・・
後悔もそらございましたわ・・・
沢山の色々な事がございましたけれど。
それでも本当に・・・わたくしは、わたくしで・・良かったんですわよね」
そう言葉の最後には、切なそうな、しかし顔がほころぶ可愛らしい笑顔に、明は、今までおばさんや年配者に、こんな感情は抱かなかった不思議な感覚を覚えた。
何とはなしに可愛いとしか言いようがない。
多分今まで、沢山見ている中にあったのに、気付いたためしがなかったのだろう。
自分がどれだけの事を見逃してきたのか・・・。
それでこそ成り立つ若さではあったが、意地もプライドも、この連中はいとも容易く崩してしまう。
この連中にしても、分かっている事などそうは無いのかもしれない。
こんな場所でダンスの練習なんてしているくらいだ。
でも唯一わかっている事、それがあるのだとしたら・・・
こいつらはどうして俺に、俺の眼の前に居るのか・・・・・
明は視線を落として瞬間ボーッとなった。
幽霊たちも、皆それぞれに思う所があるのだろうか、静まった。
しかし幽霊たちを喚起するかのように、清宮が、静かだが落ち着いた声を出して皆を見渡した。
「日々を生きた私達が、結局、何故残ってしまったか、どこへ行くのか、皆目見当はつかないですね・・・ただわかるのは・・・ダンスをしましょう」
フッと誰かから笑いが起こって、リラックスした声が又飛び交い始めた。
明は少しホッとした。
分からないなら分からないなりに出来る事があるのかもしれない。
自分にもこの連中にも・・・
【2014.1.25 Release】TO BE CONTINUED⇒