<soul-77> 消えゆく魂
ホールの様なだだっ広い倉庫の中央で、スポットライトを浴びている風にも見える、一人で立ち尽くしている真野を 明は遠目で見ていた。
「みんな成仏したら あの真野とか言うギャルはどうなんの?身体に戻れんの?」
福喜はキョトンとして又明に視線を戻すと口をつぐんだが、 すぐ笑みがこぼれて、鼻で笑った。
フフッと言う鼻息で、笑われたのは分かっていたが、明はそれも気にはならなかった。まだ真野を見ている。
福喜は確信に満ちた目で暗闇も介さないのか明を見据えると、
「さあね。 あの子次第だよ。何せあたしが見付けるまで、一人でフラついてたからね。あの子が生霊って知ってんのかい?」
「え?・・うん、まぁ」
生返事をする明に、頷きながら、福喜は本題に入った。
「そんなら話が早いね。
いいかい? 生霊ってーのは人間の魂、 精神の塊なのさ。
そいつが体から離れちまったら、どんな状態に体はなると思う?」
「?・・・ ・・しんどそう?」
「ふん。 まあ、そんなようなもんさね。体への負担は相当なもんだ。
あたしらみたいに魂だけでも成り立つのは 体から綺麗に放り出されたからさ。あの子みたいに調和を崩すと」
福喜は 真剣な眼で射抜くように明を見つめた。
視線は隅の暗闇でわからなかったが、覆いかぶさるように近付いた福喜の体に、明がドキリとしながら身を引き気味に呟き聞く。
「どうなんの?」
福喜は声を静かに落とし、脅すように明に囁く。
「このままじゃあの子消えっちまう」
「・・・ええ!?」
驚く明の肩をガッと掴み引き寄せると、明の肩を上から自分の脇で組んで ひそひそと注意を引かないように小声で福喜は早口に教えた。
「魂がね、 薄くなって消えっちまうのさ。あたしゃ彷徨ってる間にそんなのを2度見たよ。
だけどあの子にいくら言ったって聞きゃあしない・・・ あの子にはあの子の理屈があるからね。まあ屁理屈っちゃ屁理屈だが」
「そんな!?こだわってる場合かよ!?」
つられてひそひそと力む明に、 してやったりと福喜は微笑んだ。
【2014.4.8 Release】TO BE CONTINUED⇒