<soul-72> 生きるための目的
明は照れているのか怒っているのか妙な表情をして見せながら
「!?いや、そっこまでは言わない・・
そんなデカくないけど・・・
少しは・・・違う・・・かもしれないけど・・・
とりあえず!そんなん!!
プライドより大事な事ってそれだ!!」
言い当てて、やっと息がつけた様にフーッと深い息を吐くと、驚く真野を一瞥してから福喜は
「自尊心と闘っても、盛り上がっても、
勝ちゃあ見えてこないのさ。
落ち着いたら自然と分かる。
目的のために生きてんじゃあない。むしろ逆さね」
そう言われて、なんとはなしにでも、自分の判断が、今言った言葉が間違ってはいないと再度認識できた明は、フーッとほとんどの息を吐き切る様に口をすぼめて息をつくと、小さな溜息で息を整えて、天井を見上げながら、まるでそこに戻り思い出す様に、現在を生きている様に、あの霧雨を浴びた意識を思い起こして
「何かこう言うのって、雨も優しいんだな」
そう漏らす自分に驚きながらも、真っ暗な天井に少しも恐怖が無く、やっとあの時の自分をも、今があって納得がいくような気持ちになった。
不可思議そうに明を見る一同に、ツテとの笑い合戦に飽きて負けた助八が、
「あ~~ああ~~負け負けじゃわしの負けじゃ」
と勝負を放り出して、明を不思議に見る一同に、流石に佐山も民も、瞬間諍いも忘れて明を見ていたが、唯一、伏し目がちに辛そうに佇む十勢を目ざとく見付けた助八は
「坊主っくり?何じゃ?誰かにいじめられたんか?
なんじゃなんじゃ、そのシケタ面?」
十勢は自分に話を回さないでくれと、厳めしい少年の顔と両腕を突っ張って避けながら訴えるが、頓着しない助八はワシャワシャワシャアっとその十勢の柔らかな薄焦げ茶の髪を撫でくり、
「いっつでも!ワシやみんな頼れ!
そりゃあ、今晩で成仏しちまうがあなあ。
わしゃ戦争を経験しとるからな。
ここに居るもんの大半がそうじゃ。
子供は絶対傷つけん!!」
青筋を立てながら年寄りチックなレトロなチラシの様なガッツポーズを取る助八に、何だか分からなくても、哀しそうに十勢はちょっとは笑ってしまう。
仙吉は、全くもって状況を知らずに、助八の意を継承する気合い満々で、
「助八さん・・・あんたってえ人はどこまで・・・
おいら羨ましいよ。
おいら、人に負けた試しもねーから、勝った意識もわかんねー。
だからよお!明るくならずに何になる!!」
宣言すると、ガワッハッハと腰に手を当てて、笑い合戦を引き継ぐ勢いで豪快に笑う仙吉の場違いな決意に、シラ~ッとする一同に代り、明は先ほどまでとは違い、若干の優しさも込めながら
「だからあんたら何でそこまで明るいの!?
駅前でたむろってるJKより明るいから!!」
【2012.3.19 Release】TO BE CONTINUED⇒