<soul-73> 携帯電話
「JK?」
と小首を傾げて、自分の知らない英字に疑問符を投げるツテに、十勢が気を持ち直した様子で、穏やかに教えてやる。
「女子高生のこと。女子のJに高校生のK」
「何だい?何だい?いつの間に日本は英語圏になっちまったんだい?」
と半分冗談で返すと、清宮はそんな態度の十勢に安心した様子で微笑みながら
「大丈夫です。まだ日本は日本語文化圏ですよ。
仙吉さんみたいな方もいますけどね」
と仙吉にウィンクして見せると、射抜かれた様によろけた動作をしっかり取りながら、ニキッと笑った歯茎は隠せずに
「おいら、ギャグで行くんだギャグで!!」
言い切る仙吉に、呆れて笑いだす幽霊一同に、明も吊られて笑いだしそうなその時、現実の音が鳴り響く。
それは二階堂の携帯電話の呼び出し音で、機械的な音が、まるで仙吉よりも場違いに感じる明の耳にも、二階堂が電話に出た会話が漏れ聞こえる。
「はい!!そう!!Yes Good
YeahYeah」
そう電話応対しているので、福喜が英語部分は分からなくとも察して、二階堂の方へ足を向ける。
ツテも一緒になって、英会話に連られる様に福喜の後を追う。
仙吉は、もう時間が迫っている事を勘付いて
「そろそろお開き・・・じゃねえや、時間かな?・・・
おいら・・・・どこに行くかも分からねえ汽車に乗っちまったか?」
真野が、じっと息を飲んで待つ一同に気遣い、場を取り成す様に声を仙吉に掛ける。
「仙吉さんは奥さんがもう待っててくれてるんでしょ?
そう言ってたよね?」
そう気遣う口調に、明が真野の今までのキャラに無い余りの優しい声に度肝を抜かれているのも知らず、仙吉は照れ臭そうに無造作に短髪のゴマ塩頭を掻き
「真野ちゃん・・・気持ちゃあ嬉しいが・・・
女房が待ってるなんて思えねー。
ただ、魂ってやつがどこかに帰って行くもんだとしたら、
俺が帰れんのはあいつんとこだけだ」
そうにんまりと笑う仙吉に、民は心を打たれた様に見つめると、ふと佐山の足元に気付く。
佐山の足は動こうとして又戻る感じで、ウズウズと小さく揺れている。
それにも気付かない仙吉は、遠い思い出を手繰り寄せる様に
「おいら、全部おいらが正しいって信じてたからなあ。明君や」
「?」
【2012.10.22 Release】TO BE CONTINUED⇒