<soul-71> 希望は捨てない
「明に目え付けてたのはあたしさ。
いくらなんでも、そう調子よく当日に
真野のダンス相手が見つかるとも思ってなかったからね。
数揃えにしても、唾付けとくために、
何で吊ればいいか探ってたのさ」
「!?・・・やっぱな~、な~んかおかしいと思ってたんだよ。
ここまで状況合致するって変だもんな!!
こっちは金が必要で、そこにこんなバイトって・・・・
そりゃ吊られた俺がわりいけどよ!
尾行ってやることがセコ過ぎんだよ!!
ストーカーか探偵気取りか!?」
「まあまあ、どっちでも無いんだから良しとしなさいな」
露子が手で明を押さえこむと、ツテも
「supply and demand、
需要と供給はGoodならそりゃ後も尾けるだろ」
「いや、でもそれ違法だし」
苦笑いで真野が控えめに諭そうとするが
「死んでんだもん、誰が捕まえるの?」
十勢が正論で口を挟むので、気まずそうに愛想笑いで誤魔化す真野に
「言い負けんじゃねーぞ!!ギャル!!
そうだよ、違法なんだよ!!警察が動かなくても犯罪は犯罪だ!!」
「犯罪いい?」
と険しい表情でギリッと睨む仙吉の余りの眼光に、言ってはいけない単語だと明でさえ直感的に判断し、思わず首を横に振って委縮する。
露子が小さくなった明に、商魂だましいが揺さぶられたのか、伺いを立てる。
「タカビーなのも女性に断られた一つじゃございませんこと?
何ならいい紹介所、割安で紹介いたしましょうかあ?」
「結構です」
目を剥いて歯ぎしりして打ち消そうとする明に、清宮はまだまだ穏やかに
「辛くとも希望は捨てるもんじゃないよ、明君。
一寸先は・・・穏やかさだからね」
そうまるで声とともに存在が一服の清涼剤の様に発しながら、チラリと十勢を見やると、十勢は子どもならではの怒られた後の様な、渋い表情で空を見つめている。
明は、『希望捨ててねえし!!』
そう言いそうだったのだが、口をついたのはまるっきり別の言葉だった。
「目え覚めた」
「は?」
訝る真野や、まだ笑い合い合戦をしつこくしている助八やツテに飽きた幽霊連中が明を見つめる中、明は
「何つったらいいの?つまりはそう言う事だよ。
その爺さんが言う様に、穏やか・・・じゃなくて・・・
何つったらいいのかな・・・・」
と言葉に迷っていると、福喜は幸せそうに鼻で笑って
「自分や世界に優しくなりな、あんたもね。そんな感じかい?」
【2012.2.18 Release】TO BE CONTINUED⇒