<soul-70> 張り込み
「ソッコー無視」
「それでも食い下がられたら?」
「あり得ない!!絶対嫌!!気持ち悪いし怖いし」
「ね?そう言う訳」
「?」
何の話だと訝る真野に構わず明に女の心理を教えてやる希和子にも、納得がまだいかない明は、
「気持ちが無いのに思いやられたって・・・期待しただけ空しいだろ」
「だけど」
そう希和子は指を顎に付けて、これだから男は可愛いと思う感じで微笑むと
「思いやりの無い世界なんてつまんないわ」
そう微笑む希和子に、明はやっと何か報われた気がして、いやいや、希和子に報われてもと慌てて否定しようとしたが、上手くいかなかった。
明は顔に血が上って真っ赤になると、のぼせたのではなく温かさが蘇ったのが分かった。
彼女の心理は、本当は今の解釈とは違うかもしれない・・・でも、言われたとおりに考えると、それはそれで、とても後悔する気持ちにはなれない。
良かったのか、これで・・・・
俯くと、明は目をつぶった。
後悔しないそれは、良かったんだきっと・・・・そう思えただけで、既に全て報われている。
それを否定しようも無いのは、明自身が良く分かっていた。
真野は何が何やら分からずに、明を見ていたが、希和子はお見通しとばかりにふふふと笑みがこぼれていると、そこのところはまるで知らない福喜が参加して
「何だい、泣いてんのかい?そんなに金が無いのが心配かい?
これが終わりゃあ、駄賃は孫が弾むさ」
明は顔を思わず上げて、ブンブン首を横に振り
「そんなんじゃねーよ・・・
金が無いのは確かに辛いけど・・・・」
福喜はニヤリと笑うと
「縛りは取れるさ」
そう言い切る福喜に、見透かしているのか?と明が訝った瞬間、もう一つの疑問の方が勝る。
「そうだよ、そうなんだよ!大体何で俺が金無いの知ってんの?」
シレッと目を逸らす福喜に代わって、助八が笑い合戦の延長で笑いながら、油断して暴露する。
「ジワッハハは、福喜さん張り込んどったからなあ」
「は?張り込み?」
と眉をひそめる明にもう言い逃れも面倒になった福喜は視線を戻して、明に言い切る。
【2012.1.22 Release】TO BE CONTINUED⇒