<soul-69> 言い返せない男
「わしゃその棚から月餅ってのあればなあ。
こまめに女は相手せんと月ッ句できんからのお。わかってたらなあ」
と悔しがって笑う助八に、明はまたもや呆れながら
「何人だよ・・・単語すり替わってる・・・
もう原型もとどめてないじゃん」
そう脱力気味でツッコむと、助八はツンと澄ましたフリをしながら
「さっきのあんちゃんの話じゃないが、
これでもプレート高えんじゃ、わしゃ」
「プレート?」
眉をひそめる一同に、明は分かる自分が嫌そうに脱力しながら
「プライドね」
と教えてやると、合点がいったツテは高らかに笑って
「ぐわはは!何でそんなにわかるんだい、明坊!!
そうだよ、いんじゃねえかい?
自尊心がなけりゃ~何やったって返って来ねえさヒヒヒヒ!」
そう言いながら、余りに明が解読上手で腹を抱えて笑うツテ。
明は目をわざと細めて遠い目をして、付けられた「坊」も、助八達のトンチンカンカタカナが分かる自分の嫌さをアピールしながらも、考えていた。
何かに取りつかれた様に自分を見下げていた自分を。
今更思うと、それを彼女も感じていたのかもしれない。
プライドを持ってもいいのかもしれない。
人間性と言う点においては、この連中と比較する訳では無くても、それも有りなのかもしれない。
明はそんな事を考えていると、我知らず呟いてしまう。
「俺がガキ過ぎたんだろ」
「何?」
とグワハハハと盛り上がって笑い合い勝負をしているツテや仙吉達を見ていたにもかかわらず、聞き逃さない希和子に、もういいか、と明は簡単に、素っ気なく説明する。
「相手にされないで、一方的に話されて終わったからさ。
俺が言い返せない男だって分かってたんだろ」
何の話かも分からないだろうと、たかをくくって話した明だったが、希和子は若干目を見開くと
「あらあ、相手の子、ちゃんと話して縁切ってくれたんなら、
それ明君の人徳よ」
「は?」
とやさぐれ気味に顎を突き出して聞き返す明に、希和子は真野を呼ぶ。
「真野ちゃん」
「?」
と希和子の問いかけには素直に顔を向けて反応する真野に向かって
「もし好きでもない男の子に言い寄られたら、
その上嫌な奴だったら、どうする?」
【2011.12.16 Release】TO BE CONTINUED⇒