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Story&Illust by 森晶緒
“Brown on Blue” by 佑樹のMidi-Room
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<soul-65> 愛情こそが人生

 怯んだ佐山にこれ幸いと、希和子が話を無難な方に戻そうと、皆の視線を集めるために、わざと明をからかう。

 収集のつかない会話に、明まで自分の発言に自信が持てなくなって来ると、一気加勢に仙吉達が押しまくる。

「そんなんだから、金も持たねーでフラフラしてたのかい?現代っ子だねえ」

「仕事にも身が入らん訳だ」

 助八が妙に納得していると

「それどこで見てらっしゃったんですか?」

 露子が助八にふいに訊ね、しらじらしく目を上に走らせて助八はすっとボケる。

「そうだ・・あんたら何かおかしいぞ?
 どこで見てたんだよ?
 俺のこと・・・何で・・知ってたのか?」

 希和子はそんな明のうろたえを、さも可愛がるようにコロコロと笑い声を上げて、微笑ましく演説をぶつ。

「いいじゃあないの。そんな事より仕事よりプライベートが問題よ?
 仕事ができる男は魅力的だけど、
 隙がないとやっぱり魅力は半減しちゃうし。
 ダメな男ほどよくモテるから」

 そう夢見る様に口を挟むので明はもうどこがどうかも分からず、とりあえず目の前の希和子の発言を撤回させようと、

「俺ダメ男じゃな!?」

 そう慌てて否定する間もなく

「まあ、死んじまえば仕事もクソも無いからねえ」

 と珍しく福喜が合いの手を、佐山を伺いながら打ち、露子が身の覚えがあるのかムキになって

「そこのところはちゃんとご理解していただきたいものですわ。
 殿方は仕事さえ!していれば妻や子が満足していると
 お思いになられる方おられるでしょ?
 女性だって働いているんです!
 それでも!愛情こそが人生!!
 死んでつくづく思いましてよ」

「露子お譲にそこまで言われりゃあ、そりゃ、納得するしかないわい。
 金の有る無しは、相当苦労もしてきたんだろうからなあ」

 と助八が遠い目で頷くと

「結局仕事は二の次さんの次ってこったねえ」

 と福喜が今やっと月の光が移動して濃くなった眉毛を、佐山に向ってトドメを刺すようにキリッと持ち上げると、遂に佐山は堪忍袋の緒が切れて喚き散らす。

「私だって頑張ってきた!!男はみんな頑張ってる!!
 働く事をサイドメニューみたいに言うのは勘弁してくれ!!」

 ポツーンと佐山を中心に会話が途切れるが、ボソボソとひそひそ声が飛び交う。

「サイドメニューって何じゃ?」

 仙吉が助八に

「付け合わせ?」

 と自信無げに教えてやると

「たくあんみたいなんか?」

 と訊ねる助八にツテは

「side.脇のmenuだから・・・side menu?」

 と素っ頓狂な会話も視界に入らずに、俯いて身を震わせ、それでも耐えようとする佐山に、トドメを差す福喜。

「不満があるなら今のうちだ。成仏したら何も言えないよ。
 言いたいなら言っちまった方がいいってこともある。この世の最後さ」

 佐山は掌で額をこすると、福喜の言葉でやっと佐山が言いたい事が何かあると分かった面々は、一応に顔を見合せ喋るのを控えると、鼻を掌で包んだり、自分を落ち着かせながら話しだす覚悟をつける佐山を、民は真剣な表情で見つめている。

【2011.8.18 Release】TO BE CONTINUED⇒

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