<soul-53> 女の年齢
真野は皆に交じって突っ立っていたが、面白くなさそうに眉間に皺を寄せながらも、しかし福喜の言葉を最も信頼しているのは明白で、ふてぶてしく鼻を連続で鳴らすと、腕を回して肩慣らしをする。
そんな時、仙吉が一人どんよりとうなだれているのを発見して、真野はためらう事無く声を掛けた。
「仙吉さん……何かショックなの?」
仙吉は恨みがこもった眼で真野を見上げるので、瞬間その迫力にギクリッとして身を引く真野に、手を振って打ち消すように仙吉は態度を豹変させて口をすぼめて猫撫で声を出す。
「わりいわりい、真野ちゃん。ショックっつーよりな・・・
せっかくの兄ちゃんからかう甲斐が無くなっちまって
がっかりしたんだよお。
一つおいらにはつまんない事が増えちまっただけなのさ」
明がすかさず振り返って声を荒げる。
「あんたらの道楽に………付き合ってはいますけど、
俺自身を道楽にしないで下さい!!」
我知らず敬語で怒る明に、希和子が柔らかな口調だが有無を言わせず
「人付き合いって、時にはからかったりするのも愛情の内よ。
お年寄りの道楽を取り上げちゃあいけないわ」
明を無視してすかさず仙吉が
「お年寄り!?おいら希和さんより年下の筈………
お歳よりお年寄りに見えますか?何てね」
とデハ~ッとニヤけるので、先程の一瞬の恨みの目付きに肝が冷えていた真野は、やっと落ち着きを取り戻す。
そんな真野を知らずに、幽霊連中は尚もノー天気に騒ぎ出す。
先鋒は今度は露子がつとめ、仙吉に噛み付く。
「確かに希和子さんよりお若いかもしれませんけれどもね、
先程も福喜さんがおっしゃいましたでしょ?
女性に歳は関係ありませんことよ。
むしろそんな些事にこだわられるなら……」
「いやいや、失礼したかった訳じゃあござんせんがね」
とニヤけておどける仙吉に対して、真っ向勝負を受けるとばかりに助八が唾を飛ばしながら
「バシッと言った方がええぞい、仙吉っつぁん。
わしら死んでまで女の歳の世辞しとられんわっ」
とムキになるのに、佐山も乗ると
「確かに確かに。別にいいじゃないですか。
歳は歳って言う事実なんですから。
それが、口にしただけで男が悪者扱いって、
逆に女性はそれを笠に着てやれセクハラだなんだと
過敏になり過ぎですよ!」
「だっておばあちゃんって言われるとやなんですもの!!」
と今度は名家の令嬢もどこへやら、年甲斐も無く露子がムキになって叫ぶと、やれ同盟だとばかりに
「それは言えてますよね。
子供に言われる分にはいいんです。
そりゃあ事実ですから。
でも男の方に言われるのは、正直腹立ちますよね」
「そうですわよね?自分の孫でもあるまいしっ!!」
「私孫にも言われたく無いですよ。
娘の友達に『おばちゃん』って言われるのも、
慣れない内は頭に来ましたもの」
そうシレッと告白する民に佐山は慌てる。
【2009.12.2 Release】TO BE CONTINUED⇒