<soul-52> 道楽の行方
明はムキになると
「何で俺があいつと折り合わなきゃなんねんだよ!?
そんな理由がどこにある!?」
「生きてるからさ」
「?」
「あんたらはあたしらと違ってまだ生きてる。
あたしら死んだもんは造作もないが、
生きてるもんは折り合っていかないとね」
明は少し語調が緩むと
「どう言う事だよ?」
「そうさね。無駄に考えねーこった。
考えるだけじゃ答えは出ねーのさ。
そう言うもんさ。生き物ってえのは」
「何が言いたいのかさっぱりわか……大体何なんだ?これ?ダンス?
本当に必要なのか?
そんなんしないと人は成仏もできねーの?
何で踊らなきゃなんねんだよ!」
福喜はやっと明の方を見ると、その顔は静けさをたたえながら何か遠いものを見た様な懐かしさを秘めている。
「憧れてたのさ。むかーし昔ね。ダンスってえのに。
本で一人で覚え様として、
癇癪起こしてやめちまってそれっきりだったがね。
単に道楽だよ。意味なんて無いのさ」
そう口の端を上げて微笑む福喜に、明は福喜が何かを思い残した人間には見えずに居た。
それよりも、何がどうしてそうさせ得るかは不明だが、福喜の存在感は、何かを成そうとしている様にも見える。
意味不明の自信が、福喜の周りの空気から明にも感じ取れた。
しかしそれは一体全体何なのかさえ今の明には分からない。
ただ、踊る事が福喜の成そうとしている一端であるのは間違いないので、結局のところ、踊ってみないと、この連中がどうなるか、何が起きるか、何も分からないのだとあらためて痛感して、それが自分にどう影響するかは考えない方がいいと、現段階では明は結論を出さない訳にはいかなかった。
そんな明の心のもろもろの考えを知ってか知らずか、福喜は微笑んで勝手に幽霊達に声をかけてけしかける。
「小僧は踊る気満々だよ!!あたしらも負けてらんないさね!!」
「!?」
明が何を言うのだと噛み付く間もなく、仙吉が雄叫びを上げる。
「えええええ!?何だよ!?いつの間にそうなったの!?」
「あらあ、一件は落着ね」
呑気な希和子の声に
「違いないわい。
これ以上問題片付かんかったら、おちおち成仏できんわい」
ガハハハと笑う助八につられて、幽霊達も声を上げて笑い出す。
その和やかな雰囲気に、これ以上突っ張って文句を言う気にもなれず、明はズボンのポケットに手を突っ込むと、ブチブチと唇を鳴らしてあらぬ方を向く。
【2009.11.18 Release】TO BE CONTINUED⇒