<soul-43> 殺生
露子が、希和子のせっかくの賛同にも納得できないと唇を尖らせて
「ネズミちゃんとゴキブリは違いますわよー。
哺乳類と昆虫ですもの。
ネズミちゃんと違ってゴキブリは懐かないでしょ?
それ飼ってたって言いませんわよ?」
「それが懐くんですよお」
そう微笑ましく語る希和子に、絶対一緒にしないでもらいたいと、露子は口から泡を飛ばす勢いで
「意思疎通ができてたって言えますの?
きゃつらウジャウジャ居ますわよ?
単体なんて識別不能じゃありませんこと!?」
ムキになる露子を微笑ましく見つめて、あくまでもおっとりと頬に手を当てて希和子は、まるで子供の話でもしているかの様に軽やかに
「それがこの子!!ってわかるんですよおー。
それに、それを言うならねずみさんだって、
私の時代にはそこら中にウヨウヨしてましたよ?」
二人の会話に、苦虫を噛み潰した様な面持ちの男連中を代表して、佐山がさり気なさを装いながらも唯一できた釘を刺す。
「ウジャウジャとかウヨウヨとか、
擬音語は想像力を喚起させるから止めて欲しいなあ」
言いながら、又想像を刺激されたのか、思わず顔を背ける佐山に、清宮は清潔感の溢れる老齢の容姿からは想像できない…しかしある意味では穏やかな外見に副った凪の風情で
「お二人共博愛主義だったんですねー。良い事です」
と一人頷く。
しかし、そんな清宮や加えて露子と希和子の会話を意味ナシとみなした民が、有無を言わせずネズミが消えて行った方に身構えると、主婦の義務として宣言する。
「とにかくねずみは退治しなくちゃ」
その提案に、ツテが腕まくりすると
「わたしゃが、手で取ったるわ」
仙吉が気絶しそうな声で
「!?手で取る!?」
流石に見るに見兼ねて助八が
「退治せんでええから」
とツテを止めに入るが、当のツテは履いているスラックスをつまみ上げる仕草で、ヒョイヒョイと跳んで行きそうに足を踏み出す。
が、そこでツテの肩を後ろから掴む者が居た。
思わず立ち止まり振り返るツテと共に、皆の注目を一身に集め、掴んだその人物は誰よりも通る声で一声!戒める。
「忘れなさんな!!あたしら霊は殺生はできないんだよ!!」
そう高らかに戒める福喜に、明は意外そうに漏らす。
「え?」
【2009.6.6 Release】TO BE CONTINUED⇒