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Story&Illust by 森晶緒
“Brown on Blue” by 佑樹のMidi-Room
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<soul-42> ねずみ

「ウワアア!!ねずみ~!!」

 明達が瞬時に真野の足元を見ると、こんな倉庫で何故?と言う程ぶっくり丸々したネズミが、その体形からは想像もできない素早さで、倉庫の端目掛けて駆け抜けて行ったところだった。

 真野は意識があれば不本意だっただろうが、思わずしっかりと明の首にしがみついたままだった。

「え?」

 と真野が首に回した腕を支えて明は、まんざらでも無い笑みをこぼすのを堪えていると、ネズミの正体を見慣れた女性陣がさざめき出す。

「そりゃねずみだって居るだろが。しかし丸っこい奴だったねー。
 何食ってんだいありゃ?」

 ツテが首を傾げると

「あれはここを根城にしてるだけじゃないかしら?
 餌には困っていないと見たわ」

 露子が推理探偵よろしく腕組みをして納得ずくで発言すると、

「街の方からの流れものかしらねえ」

 とおっとり構える希和子に、仙吉が驚きを隠せずに

「街から来たって見ただけでわかるもんですかい?」

「大体は、ねぇ」

 露子が賛同を求めると、民以外の女性陣はもっともだと首を縦に振って頷き合う。

 一人真野は相変わらず明にしがみついて恐怖にまだ打ち勝てず、震える声で

「こ~わ~いい~!!」

 と背中に寒気を感じる様に身震いする。

 明は照れ臭そうにしながらも、困ったなあと調子づいた笑顔を表情の際で抑え込みながらも

「ドラえもんかよ、あんた」

 と言う、可愛げのあるツッコミしか敢えてしない。

 希和子が真野を見て理解できなさそうに

「そう言うとこ生霊ねえ。生き物が怖いだなんて」

「絶対それ違う!!そんなの関係無いいい!!!」

 真野が天井に向かって吠えると、露子は露子で

「恐くなんかないわよお?かーわいいじゃありませんか!思い出すわー。
 あたくしが昔嫁いだばかりの頃に、家に出たネズミちゃん飼ってたのを」

「飼う!?」

 男性陣が流石に顔色を変えると、ツテは我関せずと

「流石露子!お嬢ダネエ。普通は飼わないよ、ねずみなんてえのは」

 ニカニカ笑って諭すが、希和子も露子に賛同して

「でもわかるわー。私もビンボー時代、寂しかったから、
 部屋に住み着いたゴキブリ飼ってたもの」

「ウゲッ」

「っぎ!?」

「ヴ!!」

 男性陣、特に明と佐山と仙吉が同時に奇声を発する。

【2009.5.30 Release】TO BE CONTINUED⇒

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