<soul-41> 後は楽しく
福喜に報告して、周りに知れ渡らせた張本人の十勢も、笑顔で明達を囲む輪に参加している。
周りに和やかな期待満面の顔が勢揃いしているのに参った様子で、額に指を当てて困っている明に、既にギュウギュウにツテに明に押し当てられている真野が首をやっと上げて提案する。
「大丈夫。踊れるから。それにどうせだから、みんなに見てもらって、
なおした方がいいとこ聞いてみたら?
本番前のお披露目だと思えばいいんじゃない?」
「はあ?この輪の中で踊れって!?正気か?恥かくのはごめんだ!!
お披露目って何だお披露目って!!披露宴じゃあるめーし!!」
明はそういきり立つと、真野から体を引き離そうとツテの腕の力に抵抗するが、スッと真野に手を引かれてダンスの体勢を取られると
「どうせ、みんなと後で一緒に踊ったら見られるんだから。
それとも霊のあたし達より踊る度胸も無い訳?」
「!?おまっ……さっきの仕返しかよっ?」
「そうですー」
とスイーッとステップを踏んで明をリードし始める。
不慣れだが、明は先程の練習で得たステップを、もう捨て身の覚悟で踏んで、周りの幽霊連中に真野と踊ってみせた。
清宮が小さく拍手しながら
「bravo」
笑顔で認めると、他の幽霊達も好き勝手に講評し出す。
「節回しがダメだなあ」
ダメ出しする助八に対して、仙吉がダジャレしようがないのを悔しがりながら
「それリズムって言うんですよ。り・ず・む!!
リズム、リズム、リズム、リズム」
と肩を揺らして調子を取れば、露子は
「もっと腰も使わなくちゃ」
「いや、これでいいでしょお。
この短時間に呼吸も合わせられるって大したもんですよ」
腕を組んで頷く佐山に、十勢も
「ね。いい感じになったでしょ?踊れてるよね」
「まーだちっとばかし早くないかね?」
ツテがからかうような視線で明達のダンスを眺めると、民は
「これだけ踊れれば大丈夫ですよ。
後は楽しくって、福喜さんのスローガンにある通りですから」
そう微笑んで、静かに優しくダンスを見守る。
明は見世物扱いと感じていたのも吹っ飛んで、真野とのステップに集中していた。
何かが胸の中で少しずつ膨らんできている。
これが何なのか……突き止めたいと明が思った瞬間、悲鳴が上がり、中断された明の首ったまに真野が抱き付いて来た。
【2009.5.18 Release】TO BE CONTINUED⇒