<soul-39> 11歳の死
真野は、十勢が喜んでいる様子に、奥歯を噛み締め切なさを隠すと、十勢がいいのならそれでいい…と明に対しての威嚇を止めた。
十勢は照れ臭くてしょうがないと言った風情で体の重心を左右に揺らしながら、話題を変えようと
「それよりさあ、練習上手くいってたみたいにちょっと見えたんだけど
……どう?踊れそう?」
「何とか」
真野が皮肉っぽく口の端を上げながら答えた。
明は真野の変貌に、真野を見ながら呆けていたが、十勢は体を揺すりながら、『それなら』と
「じゃあ、もう少し練習したらもう準備入っていいよね?
僕、福喜さんにバンドの人から、
歌手の人いつ来るかも聞いてもらって来るね……真野ちゃん」
「ん?」
穏やかに真野が聞き返すと、
「ダンスの相手見つかって良かったね」
と満面の笑顔で後ずさると、ピューッと福喜の方めがけて駆け出して行く。
「………十勢君は……本当にっ」
真野の呟きは、余計なお世話だと言う口ぶりではあるが、表情は優しく顔をしかめている所からも、十勢への思いやりが見て取れた。
明はその真野の表情を見て取って、尚更バツが悪そうに
「俺………何かマズい事言ったみたいで……」
と言葉を濁す。
真野は一瞬片眉を吊り上げるが、大きく溜息をつくと、思いの他柔らかく、
「十勢君が気遣ってんのはね……希和さんの方。
自分とじゃ釣り合い取りづらいから……
希和さんに申し訳無いって」
「え?………あ……そうなん……」
戸惑っている明を見据えて、真野は急に顔を厳しくすると
「十勢君は………生まれた時から心臓に疾患があって…
……2才までも生きられないって言われてたのよ…
……それが11歳までちゃんと生きれた……
…それでも……思い出を残した事に負い目も感じてるの。
ご両親より先に死んじゃった訳だし………
誰も好き好んで死んだりしないけど」
「……………」
思ってもみなかった十勢の死にまつわる話に、明は少なからず衝撃を受けた。
そんな……あんな若くて………そんなのってありか?
………それにしたって…………話を聞いても、まだ十勢や周りの幽霊達が、本当に死んだ人間だとは明には受け入れ難かった。
【2009.4.30 Release】TO BE CONTINUED⇒