<soul-34> 民の言葉
真野はステップを踏みながらも憤然と、
「あんたさっきから何かって言うと癪に障る事平然と言ってくれるけど、
そう言う自分は!?何でこんなとこで踊ってんの!?」
「バイト…だから」
ボソボソと歯切れの悪い明に、更に癇に障った真野は言いつのる。
「他にもお金なんて、作る気になりゃ作れんじゃないのお!?
誰かに借りるとかっ!あんた仮にも大人でしょ?」
これには明もムッとして、がなり返す。
「大人は余計にそんなんが面倒臭い様にできてんだよっ!!
学生の千円二千円借りんのとは話が違うんだ!!」
「単に体裁気にしてるだけじゃん!!」
「お前に何がわかんだよ!?
プライドなんてこっちはとっくに捨ててんだ!!」
真野は自分は知っていると言う口振りで、
「錆びついたのがまだあんじゃないの!?
体面気にすんのなんてその証拠でしょーが」
「!?んな事言ったってな……
俺だって…プライドより大事なもんもあんだよ…
…急には思い出せないけどっ」
とムッツリしながらも、ステップを踏むのは止めない明。
それが分かっていてイラつくのか、わざと挑発する様に真野は声高に
「じゃあだから!!さっさと止めとけば?
あんたは勝手に自分の事だけ大事にしてりゃあいいでしょっ。
今ここにあんた居なくても別になんっともないし」
と手を放そうとするが、瞬間明に思いっきり手をキツく握られると、半回転させられていきり立つ真野は
「だーから!!止めればって!?」
「止めれるもんなら止めてーわ!!」
「じゃあ!!」
明は苦虫を噛み潰した顔で、悔しさに顔を歪めて早口で告白する。
「……だってあんたのためを思ってる」
「?………は?」
急に何の事を言っているのか見当がつかない真野だが、明は直もステップを意地で踏み続けながら、真野を振り回す勢いで
「俺がじゃねーぞ!?……じゃなくて、周りが!!」
「………」
唐突な明の言葉に、呆然となりながらも理解して押し黙る真野に、強引にステップを踏んで真野を引きずりながら明は、
「気付いてねーのかお前は。単語ばっか知っててもアホだな」
「!?………」
呆然とする真野。
真野は明に引きずられて、ぎこちないステップを無意識に踏みながらも、つい先程の民が自分の所に来て、言っていた様子を焦点の合わない視界の中で思い出していた。
【2009.2.18 Release】TO BE CONTINUED⇒