<soul-33> 生霊
しばらくは周りの話し声が飛び交う和やかな練習とは一線を画して、黙々と真野の合図でステップの練習をしていた明と真野だったが、明が突然言葉を発した事によって若干緊張がほぐれる。
「わかった!!これわかった!!こうこうこうこう。
で、1ー、2ー、3、4だしょ?だよね。1ー、2ー、3、4」
「そう。よく分かったじゃない」
真野の返事に気を良くして、調子に乗った明は明るい声で
「バカにすんなよ?こん位はチョロイって。ほんでほんで?次は?」
「んー、じゃあこっからこっちに来て、こう、でバック」
「おっしゃ。こっちからこっち…でこー来て後ろっ」
「……できたじゃん」
「うおっ!?何かコツ掴めて来た?俺スゲエ」
浮かれる明に呆れながらも、まんざら真野も不機嫌では無い様子で、温和な冷静さを保ちつつ
「さっきの佐山さんの練習があったからできたんだよ。
あんたちょっと調子に乗り過ぎっ」
と、明をリードして半回転させる。
「うおっ何だ?」
「これはただね、半歩斜めに足を出して体をひねるの。
方向転換したい時なんか便利だからやってみて。
その間のステップは今の2種類の好きな方でいいよ。
あたしが合わすから」
「うん………よっ……あ、ごめ」
「足踏んだって痛く無いから気にしない。
いっぺんで出来るって思わないから、もう一回。
自分のテンポとリズム合わせて。はい、1」
「2ー、3、4」
今度は明がリードして、真野を半回転させる事が出来る。
「やり!!出来た!!」
「はい、ステップ続けて。止まんない。
もうちょっと慣れるまで、今の3種類MIXさせてステップ踏んで」
「おう……リズム頭で数えてみんわ」
又黙々と、今度は無言でステップの練習に取り組む明と真野。
何分か経ち、ほぼステップをマスターしてかだいぶ慣れ、真野の足を踏まなくなって来た頃、明が我慢できずに口を開く。
「あんた……生霊だって?」
「口開けていいの?リズム忘れずに!!」
つっけんどんな真野の様子にもたじろがず、ステップを確認して踏みながら直も明は
「わかってるって……と……何でここに居んの?」
「?何で?何かマズい?」
「マズいっつーか……何でかなと思っただけで」
真野はフンッと鼻で嘲笑うと
「あんただっておんなじ」
「ん?何が?」
「みんなあたしを判断するけど……誰もあたしを言い当てられない」
「何それ?思春期?」
「違う!!何その短絡的思考!!」
真野に火が点く。
【2009.2.10 Release】TO BE CONTINUED⇒