<soul-31> 私にできること
「だってね!福喜さん聞いて下さいな」
まだ文句を言い足りないのと、福喜が参戦すれば鬼に金棒と、賛同を求めようとする露子だったが、それ以上の有無を言わせずに、福喜は全員に睨みを効かせて一同を押し黙らせる。
福喜の威圧感に抗えないでいる幽霊一同に対して、いつから居たのか、聞いていたのか、清宮が十勢の肩を抱きその場に立って提言する。
「皆さん各々のご意見はごもっともですが、男性は女性を守るのが務め。
その男性は女性が守っている。それで手を打ちませんか?」
清宮の穏やかなアルトの声は良く通り、説得力が更に上がる効果さえありそうだった。
しかし気難しくなっている仙吉は
「だってなあ!!それを女が否定するから」
とまだ不服だと言わんばかりに口を歪める。
だが決して福喜は取り合わずに、
「女だ男だ、守る守られる?そんなのは生きてるもんの理屈だよ。
あんたらそんだけ生きて来て気付きもしなかったのかい?
生き物ってえのは『現実』に守られてんだ。
自然そのものに。それ以外に何がある!?」
佐山が納得できなそうに
「そう言う哲学論ではなくてですね。こう、女性の在り方をですね」
とまだ御託を並べ様とするが、福喜は掌を大きくバンバンバンっと三回打ち鳴らすと
「刀を納めな!!くっだらない言い争いはここいらで止めにしておくれ!!
あたしらはダンスを踊って成仏すんだよ!!
そのために練習してたんじゃなかったのかい!?
踊る段になって泡喰ったって遅いんだよ!!
練習すんのかしないのかい!!」
最後は怒号に近い、又空気を震わす喝を入れる。
流石にその時には、幽霊達の言い争いが終結した事を知った明と民も、福喜の微動だにしない姿に振り返る。
「しますします。練習するべえ」
助八が先頭切って音頭を取ると、幽霊連中も渋々練習に戻ろうとする。
露子が肩をすくめてやるせない気持ちの高ぶりを吐き出すかの様に
「もー!!福喜さんには敵わない!!」
とペアの穏やかな笑顔で手を差し出して待つ清宮の方へ向かうと、清宮は手を差し延べたまま、傍らに寄せていた十勢に何かボソボソと言い含めると、十勢は固い表情で練習のため希和子の所へ向かう。
仙吉も眉根に皺を寄せれるだけ寄せながらも、ペアであるニヤつくツテに、うやうやしく手を差し挙げてダンスの練習に誘う。
「そんな本気で怒らなくても」
まだブツブツ言い足りていない佐山が、民を探して、明と一緒の民を見付けると声をかける。
「民!!」
民は腰を上げて、思い付いた様に明を見つめると、フッと微笑み去り際に一言、明に声を残して行く。
「私にできる事も、まだあるかも知れないわね」
そう言うと、佐山では無く、真野が消えた暗闇の方へ向かって行く。
【2009.1.23 Release】TO BE CONTINUED⇒