<soul-27> プライド
明の発言に思わず目を見張る助八。
「はああ?知り合いだったか?」
幽霊達が困惑していると、明は息を大きく吐いて、やり切れなさそうに首を横に振ると、
「そうじゃない……あいつのあの時の顔………
俺投げてばっかだから、意地張ってる奴の顔見るとわかんだよ。
俺もそう言う顔よくするからさ。そんで後で後悔すんだ」
「……そんな顔…してた?真野ちゃんが?」
合点が行かない露子に、ツテが
「最初に福喜さんに連れて来られた時から、そう言う顔はしてたね」
まあねえ、と納得したり、今頃気がついたりしている一同に、明は何故かモゾモゾと、体が痒い様な気持ちになり肩を回してみたりしていた。
しかし、次に露子が言った一言が決定打となった。
「意外と優しいんじゃない」
明はボッと顔に血が昇ると
「!?優しくねーよ!!
俺は自分で言うのも変だけど、根性曲がりですから!!」
そう断言しつつも、自分がこそばゆい思いをしているのだと、明は初めて理解した。
普段の明からは想像できない感覚だった。
「こりゃ思ってたより、真野ちゃんにいい相手見付けたかも知らんな」
そう喜んでいる助八に、明は照れ隠しで怒鳴りながら
「相手って!?ダンスしかしねーからな!!
後は知ったこっちゃねー!!今晩だけだ!!
このバイトが終わったら、スパッと関係無いから!!」
「まあそう言わず。これが縁って事もあるだろ?」
と駄洒落を言う時よりニヤける仙吉に
「俺にだって選ぶ権利ありますから!!余計なお世話だ!!」
「随分とプライド高いのねえ」
露子が納得いかなそうに首を傾げていると、希和子が
「男の子だから。少々のプライドは可愛げあっていいんじゃないかしら?」
『男の子』と『プライド』のWの単語に、子供の様にわめき散らす明。
「!?プライドなんて持ってません!!
そんなんあったらサラリーマンなんかやってらんねんだよ!!
プライドなんて持ってても腐るだけだ」
「……そうかなあ。プライド必要な場合って、案外多い様に思うけどね。
逆に、だから仕事ができるんじゃないかな?」
佐山が諭す様に説くと、それを聞いて、スイーッと場を離れる者が居た。
佐山の妻の民だ。
しかし、それに気付いたのは、何とか逃げ道がないかとやみくもに辺りを見渡していた明だけで、他の連中は明を説き伏せるのに夢中で気が付いていない様だった。
【2008.12.21 Release】TO BE CONTINUED⇒