<soul-26> 知ってる顔
明は真っ赤になりながら言葉さえ詰まって、言ってしまった事に後悔しきりでいると、又練習中にも関わらず幽霊達が辛抱切れたとワサワサと明の周りに集まって来る。
しかし、やはりそこに真野の姿は無く、福喜も我関せずとバンドの方を覗きに行ってしまい、最後の砦の清宮は、奥の方で十勢を相手に何事かを論じあっていて、いざと言う時に遮って明にとっての助けになる人物は側には誰も居らず、明の心は後悔する暇すら奪われ、冷や冷やとさざ波が立っていた。
そんな事は知らずに、呑気そのものでツテが明に詰め寄る。
「なんだい、あんちゃん。
希和さんなら相手にしてくっちゃべっていられんのかい?」
「!?そう言う訳じゃ……」
「そりゃあ希和さんが相手なら、なかなか断る理由はありゃせんわな」
と助八が顎に手をやり、白い先細りの髭を引っ張りながらニマニマしていると、希和子はクスッと微笑んで
「それが相手にされなかったんです。真野ちゃんに興味があるみたいで。
少なからずショックだわ」
などと、心にも無い事を笑顔でさらりと言い出すので、明は肝が冷えきり、口を挟まずにはいられなくなった。
「今まで散々男手なずけて遊んで来たんでしょーが!!
もう引退して下さい!! 俺に構わないで!!」
佐山が承知していると物知り顔で
「やっぱり若い子の方がいいのかな?真野ちゃん可愛いしね」
「そんなんじゃ無いって!!何勘違いしてんすか!?
別にあの子一切関係無いっすから!!」
「じゃあ、何で又ヤル気出したの?
真野ちゃん可愛いじゃない。素直に認めちゃいなさいな」
とこちらは微笑ましく見守っている態度で、露子が笑いかけると、明は必死に本気で抵抗する。
「違う!!そう言うのと違う!!何回言ったらわかんだよ!!」
明が険しい表情で訴えると、流石の幽霊達も察する所はあった様で、今度は不思議そうな目で明を見る。
「じゃあ、真野ちゃんに好意がある訳じゃないのかい?
あんたがあの子出て行こうとするの止めたんだよ?」
仙吉が珍しく真顔でそう言うと、明の表情を読み取ろうと顔を覗き込む。
明はためらいがらも、言わなくてはいけないのかと溜息をつきながら、
「あいつの顔……あれが……知ってるから」
「え?」
【2008.12.10 Release】TO BE CONTINUED⇒