<soul-24> 『生前』の出会い
希和子は流れるような流暢さで、明に置いた肩の手を更に延ばすと、シャツの袖の印度更紗が心地よく耳元でサラサラと鳴る。
「しょうがないわあ。
あたしの男の子の定義って『落ち着きの無さ』だから。
思い当たる節はあるでしょお?」
明は一瞬だけ、冷静に戻ると内心では『そりゃあるに決まってる』と頷いていたが、態度は裏腹で、希和子の手をバッと勢いよく払いのけ、
「あんたの定義がどうかなんて知った事じゃねー!!
俺をガキ扱いすんな!!」
とタンカを切ってしまう。
しかし希和子の余裕の態度は一向に揺るがず、むしろ歳の割には妖艶とも取れる微笑みを繰り出すと
「じゃあ、あたしの相手して、確かめて見るう?」
「ウゲッ」
反射的に明は拒絶反応を示すが、返ってそれが希和子の妖艶な興味だけは解いたらしく、希和子はおかしそうに少女の様に笑い出すと
「お兄さんには好みじゃないのねえ、あたしって。
あたしの腕も鈍ったかしら?」
と和やかに笑う。
余りにお婆ちゃんにしては、可愛らしく笑うので、明も警戒心が緩みながら
「当ったり前じゃないっすか!?
あんたばあ……俺はどうせガキ臭いんだろうからっ」
流石に女性を意識している当の本人に『ばあちゃん』とは言いずらく、嫌味ったらしく言い返すと、希和子はいたずらっぽく瞳を輝かせて笑い
「恋愛に子供っぽいとか関係無いわよ。
あたしが最後に付き合ってた彼って18だったし」
明は度肝を抜かれて、残りの警戒心も吹っ飛び思わず叫ぶ。
「それ犯罪でしょお!?」
しかし、希和子は素知らぬ素振りで軽く
「そうねぇ犯罪ギリギリねぇ。セーフで良かったわあ」
などと言い放つので、明は慌てて
「セーフじゃない絶対!!」
そう訂正させようとしながら、希和子の自覚を促そうと試みる。
「あの、あなた婆さんですよね?」
「一応ね」
「どう見たって70は超えてる……」
「気にしないで」
気にしないでと言われて、そうですかとも言えずに明が苦悶の表情を浮かべていると、余計にその顔がおかしいらしく、希和子はケラケラと笑い転げて
「ウフフフ、アハハ!逆にお兄さんみたいな男の子って新鮮だわ。
ウフフ、生前に会ってみたかったわね。落としがいありそうだもの」
冗談めいた言葉にも、明はその自信はどっから来るんだ?と訝しがりながらも、やはり聞いた『生前』と言う言葉にひっかかり、急に冷静になる。
【2008.11.16 Release】TO BE CONTINUED⇒