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Story&Illust by 森晶緒
“Brown on Blue” by 佑樹のMidi-Room
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<soul-23> 希和子

 明が目を開けると、案の定目の前には希和子が、首を傾けて足を組む様に前後させて立ちながら微笑んでいる。

 希和子は老人にしては珍しい、ロングの印度更紗のシャツをその細い体にゆったりと着込み、黒のスパッツの様な物を履き、長く、染めてあるらしい淡いオレンジがかった桃色の髪を後ろで三つ編みに緩く縛っていて、パッと見では年齢不詳だが、しかし隠しようもない、いや、隠そうとしていない皺は確実な年齢をその手にも首にも顔にも刻んでいた。

 明は、実はこの希和子が曲者ではないかと内心思っていたため、やや不機嫌になりながらも

「何すか?」

 と眉間に皺を寄せて聞いてみた。

 希和子は自分の眉間を軽く指差して

「若いのに皺寄っちゃってる。
 お困りの様だから、何とかしてあげたいなと思っちゃって」

 と首を逆に傾けながら更に豊かにニッコリと微笑む。

「ご心配ありがとうございます。
 でも自分で何とかしますんで、結構ですんで」

 となぜか希和子には敬語になりながら、希和子を横切り、もう一度真野を練習に誘うチャレンジをしてみようと行こうとすると、希和子が

「真野ちゃんを誘いたいなら、少し角度を考えないとー」

 となにげない口調で進言する。

 的を言い当てられて、思わず立ち止まって振り向くと、明は疑い深い目線で希和子を見ながら、言い当てられたのが面白く無く、さも的外れだと言わんばかりに

「別に俺、誘うとかそんなん思ってないですからっ」

「そうねぇ。そうじゃなくてもいいわ。
 でも女ってね、一度頑固に決めたら後に引けなくなるものなのよ。
 けどやり方次第でそれは解ける所が、男の人との決定的な違いじゃないかしら?」

 意外にもまともな意見に躊躇する明に、希和子は体を滑り寄せる様に近付いて来ると、

「まあ、一番いいのは、お兄さんが真野ちゃんに気がある素振りを見せる事だ けど、そう言うのは、お兄さんには苦手そうだわね」

 何が言いたいんだこいつは!?と肩を引いて不審そうに希和子を見た明は、ふいにその希和子の笑っている目を見て理解する。

「あんた!?俺で遊んでるな!?馬鹿にして遊んでんだろ!!」

「あら~、気が付いたの?まんざらお馬鹿さんじゃないのねえ」

 と小首を傾げて口に指をやり、おかしそうに柔らかな鈴の音の様に笑う希和子。

「!?何なんだ!!」

 憤慨して力む明に、希和子は明の肩にスイーッと手を滑らせ乗せると、柔らかな口調で

「でも遊んではいるけど、馬鹿にはしていないわあ。
 ごめんなさい。年頃の男の子を見ると、ついちょっかい出したくなる性分なのよ」

「男の!?子!?」

 カアッと頭に血が昇る明に、余裕で明の肩を揉んで、猫の喉でも転がして懐かせようとするかの雰囲気の希和子。

【2008.11.4 Release】TO BE CONTINUED⇒

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