<soul-11> 4万のためなら
真野はギョッとしながら、引き止める明を睨み付けるが、当の明も自分で自分の予想外の行動に戸惑いながら、
「………何か……訳わかんないっつっても………
あんたは投げ出さない方がいい気がすんだよ……
それに………ほら、あんた居ないと俺バイトになんないじゃん?
やっぱ事情はどうあれ一晩4万は今の俺には魅力過ぎるんだよなー。
それにさ、全然知らないもん同士だから、
逆に踊るだけなら、その分後腐れなくて気も楽だろ?」
眉間に皺を寄せて真野、
「……相手が霊でも?」
「だから俺その言い分あんま信じてねーし……
まあね、万が一、霊だったとしてもさ、別に怖くないからね、あんたら。
それにそっちこそ幽霊だったら怖いもん無しだろ?
俺とちゃんと踊る自信も無い訳?」
バッと明の引き止める手を振り払い、怒りをあらわに真野は、
「!?エッラそーに!!………わかった。あんたと踊ってやるよ。
その変わり、後で泣きみたって知らないからね~」
と嫌味たっぷりに含みを持った言いっぷりで、きびすを返すと、倉庫の奥に行ってしまう。
一方、一部始終を見守っていた福喜は、満足そうに微笑み、
「そうと決まればレッソンだよ!!おい!!
ちょいと!!歌手はまだ来ないのかい?」
聞かれた二階堂は、腕時計を見ながら、
「スタジオまだ出れないって、さっき連絡が来たから、
後1時間以上はかかるんじゃないかと」
「かえって好都合だよ。みんなも!!レッソンしようじゃないか!!
真野に……十勢と言いたいとこだが、
十勢は踊りは一級品だが教えるのはからきしだからね…
……そうだね佐山!!あんたならジジイ寸前で他よりマシだろ。
二人して小僧にステッポとか教えてやりな!!」
明は苦々しげに、
「小僧って、名前教えた意味ねーじゃん……
しかもカタカナ単語目茶苦茶でやんの、やっぱババ……」
と呟くが、すかさず福喜のどら声が響く。
「ああ!?小僧!何か言ったかい!?」
「いいえ!!……さあ!!バイトだバイト!!
4万のためならやったろーじゃねーの?」
手を組み、指の関節を鳴らして気合いが入る明。
【2008.6.21 Release】TO BE CONTINUED⇒