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Story&Illust by 森晶緒
“Brown on Blue” by 佑樹のMidi-Room
Site arranged by 葉羽

 

<soul-09> パイレーツ

 渋々真野の前まで来た明、ためらいながらも、

「………聞こえてただろ?
 ………何か知らんけど……一緒に踊らなきゃ……なんだってさ」

 無言で明を見上げる真野の、以外にも真っ直ぐで透明感さえありそうな澄んだ光を持った瞳にたじろぐ明は、振り返って老幽霊達にすがるように、

「言わなきゃならんの~?」

 と助けを求めるが、仁王立ちで寸分も揺るがず事の顛末を待つ福喜に、手で『行け!』と合図して急かす幽霊達と、幽霊達が見えていないバンドのメンバーまでもが、明の方に注目している。

 皆の注目に耐え切れず、明は諦めて、鼻から思いっきり息を吸い込むと気合いをふり絞り、やっと一言、

「…………………お嬢さん………お手をどうぞ」

 とぶっきら棒に手を真野に差し出す。

 既によそ見をしていた真野、気がつき又澄んだ瞳で明を見上げる。

 その瞳に一瞬明は気が緩むが、次の瞬間!?差し出された明の手の上に自分の足をドカッと乗せた真野、そのまま明のみぞおちにケリを入れる。

 蹴りは大して入ってはいなかったが、余りにも不意の事に転んでしまい、反射的にいきり立つ明。

「てっめー!?何すん」

「しまった!!今の若いのはキレ易いんだった!!
 ジジイども!!押さえ付けな!!」

 瞬時に出た福喜の号令に、男性幽霊達がヨタヨタとしている割には素早く、転がっている明に群がり、明を抑えつけようとする。

 が、明は、

「キレてません!!余計な心配すんな!!群がんなっての!!」

 と怒鳴る。

 しかし、明が気が付くと、男性幽霊、特に爺さん連中は本気で押さえ付けてはおらず、むしろ半ばふざけて、明の体に触ったりして楽しんでいる。

「やっぱりわっけーもんの体じゃのー」

 助八が顔をほころばせれば、負けじと仙吉が、

「活きがいいから。生きてるだけに」

「それは世間ではオヤジギャグと言われてしまいますよ?仙吉さん」

 と清宮が穏やかに突っ込んでも、

「オヤジどころかジジイだっちゅーのー」

「それ何だった?ペン区レデーか?」

 と直も続ける仙吉の寒いギャグに、見当外れな突っ込みを入れる助八を見兼ねて、佐山が口を出し、

「パイレーツですよ。皆さん本当にもー」

「流石佐山さん。お若いお若い」

 助八がホクホク喜んでいると、腕組みをして明には群がっていなかったが、参加していた十勢が不思議そうに、

「パイレーツ?って?どこの何海賊?」

 呆れて男性幽霊達のやり取りを口を開けて見上げている明。

【2008.6.3 Release】TO BE CONTINUED⇒

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