<soul-08> お嬢さん、お手をどうぞ
コンクリートに座り込んでいる真野の様子をもう一度確認して、明は驚いて、
「………ギャルじゃないっすか!?
俺幾つだと思ってんの?25っすよ!?」
福喜はフンッと鼻を鳴らして、
「大して変わんないだろが。しかしそうさねえ。
お前にゃもったいないかねえ」
「はいはい。もったいないんで帰ります」
と向きを変える。
が、しかし、又もや福喜に襟首を掴まれると、顔を近付けられて、押し殺した声で迫られる。
「何が不服だい!?」
「何もかも!!それに俺ギャルって苦手だし……こうお姉様系……
つうか女の人………らしい………」
自分で言いながら、急に想いを寄せた例の女性を思い出して、黙り込む明。
「じゃあ私と踊るかい?」
ニコーッと前歯の欠けたバア様、ツテの言葉に、一気に現実に連れ戻されてあからさまに顔が引きつる明に、
「それなら私はどう?」
とサラッとした調子で民が訊くと、夫らしい佐山が、
「お前俺と言う者がありながら~……」
と、どんどん幽霊達が好き勝手に騒ぎ出す。
「おだまり!!」
一転、その場の空気が震える程のあまりの福喜の迫力に、一同シーンと静まり返る。
「小僧っこのパートナーはあの子だよ!!
小僧、金貰う身で、好みだ何だ言える立場かい!?
それからあんた達!!リーダーはあたしなんだ!!
言う事は聞いてもらうよ!!」
まだぶーぶー言うツテを尻目に福喜は、
「ほれ!!ボーっとしてないで誘って来な!!
金がかかってんだろ!?」
と明を押す。
もちろん明は乗り気では無かったが、あらためて金のためと言われると弱い所で、流れとは言え、せめてもの抵抗に思いっきり嫌そうにしながらも振り返って、
「何て声かければー……?」
やる気の無さそうな、かったるそうな態度で、一応皆に聞いてみる。
希和子が品の良い溜息交じりの声で、
「やっぱり、『お嬢さん、お手をどうぞ』じゃないかしら~」
助八がうっとりしながら、
「流石希和さん。ハイカラさんじゃのー」
だが当の明は引きまくり、
「えー!?」
しかし福喜が有無を言わさず、
「そうだね、それでいこうかい」
「今時ー!?言うの俺なんですけど!?」
「ゴタゴタ言ってねーでさっさと行きなっ!!」
不服そうな明など一向に構わず福喜は、明の背中を真野の方へ思いっきり押し出す。
【2008.5.29 Release】TO BE CONTINUED⇒