<soul-07> 真野(まの)
明の困惑を名前の方だと勘違いした福喜は、怪訝な顔で、
「何だよ?文句ありありって面だね。
めんどくせー小僧っこだねぇ。
わかったよ。『福喜さん』だ。これ以上は譲れないよ!!」
返事に窮している明にお構いなしに福喜は次々とまくしたてる。
「とにかくあんたには、レッスンして踊ってもらわにゃならんからね。
紹介しとくよ!そこの禿げた爺が助八(すけはっ)つあん。
ロマンスグレイのジジイが清宮(きよみや)ジジイ。
そこで小春日和みたいに笑ってんのが露子(つゆこ)お嬢。
艶やかに色っぽいのが希和子(きわこ)。
シケた面した爺が仙吉(せんきち)っつあんに、明るい山吹の花みたいなのがツテさん。
そして大人の女、百合みたいな夫人の民(たみ)と、その連れ合いのジジイ目前佐山(さやま)。
それと、とっつあん坊やのアイドル十勢(とせ)。それから」
遮る様に紹介された清宮が、
「福喜さん。男ばかり爺呼ばわりはやめて下さいよ」
ここぞとばかりに、男の幽霊達が揃って、
「そーだそーだ」
「頭の事は言わんでくれ~」
「それ言ったら顔の事も!!」
と文句たらたらで騒ぎたてると、福喜は、キッと男どもを睨み一喝して、
「今日の仕切りはあたしだよ!!
第一ね、女と男じゃ歳の価値が違うのさ!!
女はみんな一生花盛りさね!!」
「わぁ!!」
思わず女の幽霊達から歓声が上がる。
その内の一人の露子が、
「やっぱり福喜さん!!いい事言うわあ」
と賛同すれば、仙吉が冷静に、
「どう言う理屈だ?」
と突っ込み、わあわあ盛り上がっている幽霊一同を尻目に、コソコソと倉庫から出て行こうとする明。
しかし、すかさずスーツの襟首を福喜にむんずと掴まれ、
「どこ行く気だい?」
「え?……もう帰ります。
帰って寝ます。」
「何言ってんだい?
夜はまだまだこれからだよ!」
「……ちょっと、ダンスって言っても、年齢的にも釣り合いが……」
「心配無用!!
あんたのパートナーはあの子だよ!!
真野(まの)!!」
そう呼んだかと思うと、襟首を掴んだまま、馬鹿力で明を振り回す。
やっと振り回されていたのを止められて、目がクラクラしている明の目線の先に、今まで居たのだろうか?と思う程、その面々とは異質な女子高生の制服姿の真野(まの)が、つまらなそうにしてコンクリートの地面に座り込んでいる。
【2008.5.21 Release】TO BE CONTINUED⇒