<soul-06> 福喜(ふき)様
両手を広げてやけに威厳に満ちた態度で明の前に立つ老女。
老女は、自分をまるっきり信じない明を鼻であしらうかの様に、フフンっと笑い、
「けど死んじまってるもんはどうしようもないねぇ。
こう言う事して見せりゃ信じるかい?」
突然、倉庫の隅にあったドラム缶が空中に浮上して、明の頭上近くまで重さを感じさせずに、ふわふわと漂って来る。
気付いてドラム缶を見上げた明が驚き、思わず漏らした言葉が、
「……………エスパー!?」
その場の突如現われた一同に、ダアッハッハッハと大笑いされる。
固まっている明をよそに、老女は得意げに、
「ボーダーガイドってやつだよ。初めて見たかい?凄いだろ」
「?ボーダー?ガイ……何言ってんの?………
ええ!?もしかして『ポルターガイスト』って言いたいとか!?
単語違うだろー?………あんたら幽霊って事?…
……けど全然怖くないじゃん」
浮いていたドラム缶が急に重力を取り戻し、ガタンガランガランッと大きな音をさせて明の後ろに落ちる。
びっくりして振り返り、転がるドラム缶を驚きで見る明とは対照的に、幽霊と自称するその場の面々は、シーンと静まり返る。
老女が口火を切って、
「……………そうさね。だからもう成仏する時期が来てんのさ。
その前にパーっと騒がにゃーね。この浮き世とのお別れに」
明は前方に顔を戻して、老女や他の面々をマジマジと見てみるが、
「………俺金縛りもあった時無い霊感ゼロ人間っすよ?
その俺に見えてるって事はやっぱ生きてんじゃ………」
老女の言い分に、やはり腑に落ちない明。
老女は泰然自若として、
「霊見えるにはコツが要るのさ。
見え方さえわかりゃ見えるもんさ。
気の流れも作用するがね。
一般にゃー波長が合うとか合わないってー言われてるやつだよ」
~と偉そうに腰に手を当て、又仁王立ちでふん反り返る。
その様子を見て、明は心の底から
「エラそーなバァさんだな」
そう口走った側から、老女に頭をバシッとはたかれて、驚いて頭を抱える明はもう我慢がならんと、
「いってーな!!さっきからバシバシ叩くなよ!!」
老女は鼻の穴を膨らませながら、
「あたしゃー福喜(ふき)だよ!!『福喜(ふき)様』とお呼び!!」
「えー!?………」
露骨に嫌そうな表情で、とにもかくにも『一体こいつら何なんだ!!』と、やはりこの段階では何も理解していない明だった。
【2008.5.15 Release】TO BE CONTINUED⇒