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Story&Illust by 森晶緒
“Brown on Blue” by 佑樹のMidi-Room
Site arranged by 葉羽

 

<soul-05> 成仏ダンスパ―ティ

 両手を広げてやけに威厳に満ちた態度で明の前に立つ老女。

 明は呆然として、

「は?」

 明の反応など気にもせずに老女は続ける。

「もう後戻りはできないよ。見えちまったんだからね。」

 明は思わず、

「何言ってんの?バーさ・・」

 と言い切らぬ内から、バシッっ鼻頭を老女に叩かれる。

「いっつ」

 鼻の頭をさする明に、老女は、

「鼻たれ小僧が。まあいいよ。
 今の失言は聞かなかった事にしてやるよ。」

「いってーなー…何なんだよっ」

 老女は尚も堂々と、

「許すって言ってんだ、ありがたく思いな。今日だけ特別だよ。
なんせこれからあたしらが成仏するためのダンパなんだからね!!」

「はあ!?…ダンパ?って何それ?…ダンパ
 …聞いた時はあんな……あ!?ダンスパーティーの事?
 バイトのダンスパートナーって、それ?
 ……俺パーティーもダンスも経験無いんだけど」

 老女はわかっていた様に、鼻でフンッと笑うと

「いんだよ。
 奇数で一人足りないからうちの孫に引っ張ってよこさせたんだからね。
 期待しちゃいないが、金やるからにはしっかり踊ってもらうよ!!」

  二階堂が見兼ねて口を挟む。

「おばちゃん、そんな居丈高に言わなくても…
 それにお金払うのは僕ですよ?」

「生きてた頃に散々小遣いやっただろうが!!」

 老女はクワッと目を見開いて、二階堂に食ってかかる。

 小さくなりながら二階堂はボソボソと独り言で、

「小遣いったって、小学生までしかくれなかったのに………」

 その小さなボヤキも老女は聞き逃さずに、

「ガキに必要以上の金は悪い方に行くからね!
 あんたを想っての事だよ。それとも何かい?
 このあたしに文句垂れようってのかい!?」

「何でもありませんよ!!」

 唖然としていた明が、やっと口を開き、

「話が見えねー………大体、何のダンス…パーティー?これ」

 老女は明が興味を持ったと思い、してやったりと明をハッタと見据えて、

「あたしら世間で言う、浮遊霊や自縛霊だった奴らがあの世に召される前の、 この世とのお別れダンパだよ」

 明はなるべく気を遣って、明にしてはかなり控え目に、

「………あの……」

「何だい?」

「生きてる内にそう言う嘘つくのって、縁起悪いから辞めた方が………」

 老女は又鼻で笑うと、生きている者と寸分たがわぬその様子で、

「嬉しい事言ってくれるじゃないか。
 まぁねぇ、こんだけピチピチした肌してりゃ、
 生きてるって錯覚すんのも無理ないかね」

「ピチピチ?」

 ~と皺だらけの老女を見て明はあからさまに怪訝な表情になるが、それよりも、あまりにも突拍子も無い言い分にただただ呆れ返っていた。

【2008.5.6 Release】TO BE CONTINUED⇒

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